Noism Company Niigata設立20周年記念公演「Amomentof」。金森穣による2作品で踏み出す新たな一歩
金森穣が芸術総監督を務めるNoism Company Niigataが、本拠地新潟のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館と、埼玉の彩の国さいたま芸術劇場にて設立20周年記念公演を行う。2004年に日本初の公共劇場専属舞踊団として誕生、唯一無二の存在として日本のダンスをリードしてきた。彼らが節目の年に放つのは、Noismが辿った軌跡を振り返りつつ、あらためて未来を見据えて踏み出す、その意思表示ともいえる公演だ。 【全ての写真】『セレネ、あるいはマレビトの歌』過去公演より ヨーロッパでキャリアを重ね、帰国後も才能ある舞踊家、振付家として大いに注目された金森。新たな舞踊団を率い、意欲的に創作に取り組むのみならず、舞踊団を継続し、発展させていくために注がれた金森の労力、情熱は計り知れない。金森と、結成メンバーで現在Noism Company Niigata国際活動部門芸術監督を務める井関佐和子、彼らのもとに集ったその時々の精鋭メンバーたちの活動は、常に注目の的に。鍛え抜かれた身体が繰り出す先鋭的な作品は、上演のたびに話題をふりまいた。そんな20年を過ごした金森が今回、『Amomentof』、訳せば“一瞬の”、と銘打たれた公演のために手がける2作品は、いずれも多くの観客の心に響くパフォーマンスとなるはず。 そのひとつ『Amomentof』で用いられる楽曲は、マーラーの交響曲第3番第6楽章「愛が私に語りかけるもの」。演出ノートで彼は、「舞踊が私に語りかけるもの」という表現を用い、自身にとって「愛と舞踊は不可分なもの」と舞踊への愛を打ち明ける。出演は金森、井関と、地域活動部門芸術監督の山田勇気らによるプロフェッショナル選抜カンパニーNoism0と、メインカンパニーのNoism1、研修生カンパニーのNoism2。金森がNoismの辿った道を思い、舞踊への愛を告白するかのように取り組む作品に、未来を担う若手舞踊手たちが携わる。古くからのファンにも、これから彼らに注目していく者にも、感慨深い作品となるのではないか。 いっぽうNoism0とNoism1が出演する『セレネ、あるいは黄昏の歌』は、5月に開催された「黒部シアター2024春」の野外ステージで上演するために構想された作品だ。昨年の「黒部シアター」で発表した『セレネ、あるいはマレビトの歌』に続く、セレネ・シリーズの第2弾となる。セレネとはギリシャ神話における月の女神。月とその物理的影響力に興味を抱く金森は、自身の創作の主要テーマを「目に見えない力」とし、それを表現することこそが舞踊の本質という。音楽はマックス・リヒター編曲によるヴィヴァルディの〈四季〉。巡っていく季節、月、そして「見えない力」によって、想像力はフル稼働させられる予感。 本公演の演出ノートのタイトルに、「循環と一瞬」と掲げた金森。20周年記念公演のプログラムを決定する際、井関は「あくまでも現時点で『心の底から創りたいと思うものを』」と金森にお願いしたという。代表作の上演で過去の実績を総括することもできるけれど、ここであらためて新作を、しかも心の底から表現したいと願った作品を見せてくれる。ずっと前を向いて歩み続けたNoismらしい、未来を見据えた充実の舞台を堪能したい。 文:加藤智子 <公演情報> Noism Company Niigata 20周年記念公演 「Amomentof」 【演目】 『セレネ、あるいは黄昏の歌』 演出振付:金森穣 音楽:Recomposed by Max Richter《Vivaldi: The Four Seasons》 衣裳:中嶋佑一 出演:Noism0、Noism1 『Amomentof』 演出振付:金森穣 音楽:Gustav Mahler《交響曲第3番第6楽章「愛が私に語ること」》 レオタード:YUMIKO 出演:Noism0、Noism1、Noism2 【新潟公演】 2024年6月28日(金)~6月30日(日) 会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 【埼玉公演】 2024年7月26日(金)~7月28日(日) 会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール