米雇用統計サプライズで利下げ観測後退、S&P500は最高値圏で推移するも楽観視できない2つのポイント
米国の5月分の雇用統計が発表され、市場予想を大きく上回るサプライズとなった。その結果を受け、金利は再び上昇傾向を見せている。いまだ米国株価は高値圏で推移しているが、今後の見通しはどうか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんがテクニカル分析をもとに解説する。 【写真】個人投資家、投資系YouTuberの森口亮氏
* * * 6月7日に発表された米国の5月分の雇用統計は、予想を大きく上回る結果となりました。 事前に発表されていた同週の雇用に対する経済指標から労働需給の緩和が期待されていましたが、実際には市場予想の19万人増を大きく上回る27.2万人の増加となりました。この結果、FOMC(米連邦公開市場委員会)による利下げの観測が後退し、米国の金利が上昇しています。一方で同日、主要株価指数は一時プラスとなる場面も見られ、史上最高値圏での堅調な動きが続いています。 今回は、この雇用統計を受けての株価推移を通じて見えてきた、楽観視できない2つのポイントを解説していきます。
S&P500の高値を牽引しているのは一部のハイテク銘柄
6月8日、S&P500の年初来業種別パフォーマンスの集計結果が発表されています。その内容を見ると、S&P500全体の上昇率は年初来で+12.1%となっている一方で、この指数の上昇率を超えた業種は「通信」(22.5%)と「ハイテク」(21.4%)のわずか2業種のみでした。残りの9業種はすべて、S&P500全体のパフォーマンスを下回る結果となっています。 この結果から、S&P500の高値更新を牽引しているのは、実質的には一部のハイテク株であることが浮き彫りになりました。特に「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる銘柄群が大きな原動力となっています。その中でも、エヌビディアの株価の急騰が特に強い影響を及ぼしていることは明らかです。 このような一部の銘柄や株価指数には、複数のテクニカル指標で短期的に過熱感がある状態を示しています。