RMN編集長の新譜レビュー【空想委員会/The Winking (O)wl/tricot】
“現代の傾奇者”tricotによるキャリアハイ作品
最後は、先日札幌でもライブを行った3人組ガールズバンドtricotの『KABUKU EP』をご紹介。2010年のデビュー以来、違和感なき変拍子を追求してきたtricotがキャリアハイ作品を作り上げました。 ヴォーカル・リリック・サウンドメイキング……どれをとっても、これまでの作品を凌駕するクオリティで、リスナーを圧倒する表現力に満ちた1枚です。特にラストに収録されている『青い癖』は涙なしでは聴けない名曲です。 ちなみに「傾く(かぶく)」とは、歌舞伎の語源にもなった「常識外れ」「色めいた振る舞い」を意味します。「自ら名乗ることはしてこなかったんですが、『KABUKU』という言葉の響きもいいなと思って」(メンバーの中島イッキュウさん談)現代の「傾奇者」となったtricot、このバンドが新たな音楽シーンを作っていきそうです。 余談ですが、先月ご紹介したDIZZY MIZZ LIZZYの札幌公演は凄いライブでした。“デンマークの至宝”の異名を持つバンドらしいアンサンブルは、言語を超えた素晴らしさがありました。ライブ後にはご挨拶もさせていただき感動……20年待った甲斐があったというものです。こういう喜びがあるのも、音楽の素晴らしさだと再認識した一夜でした。 (橋場了吾/REAL MUSIC NAKED) ※アーティストの言葉は筆者が実際に行ったインタビューからの引用です。