97歳、神戸のデザイナー・藤本ハルミさん 日本の伝統美をドレスに 大阪・関西万博 パソナグループ
大阪・関西万博〈2025年4月13日~10月13日〉で、パソナグループは、パビリオン「PASONA NATUREVERSE」を出展する。 【画像】97歳、藤本ハルミさんプロデュース“日本の伝統美” 開幕200日前を控えた2024年9月、パビリオンでVIPを接待するアテンダントが着用するドレスを公開した。 ドレスをデザインしたのは、生粋の神戸っ子・現役デザイナー 藤本ハルミさん(97)。 1927(昭和2)年生まれの藤本さんは、18歳で太平洋戦争の終戦を迎えた。 自宅は神戸市兵庫区会下山(えげやま)。焼き尽くされる神戸の街を小高い山から目にして、ただぼう然と立ち尽くした。 空襲で焼け出され、着るものがない。自分の服をつくるために洋裁学校に通うようになった。藤本さんは東京・神田の文化学院美術部でファッションを本格的に学ぶ。 その後、神戸に戻り1954(昭和29)年に「オートクチュール・マーガレット」を神戸にオープンさせた。 そして、1966(昭和41)年、39歳の時にフランスへ。この時、フランス人と日本人との体型の違いにカルチャーショックを受けた。 「日本人の体型を生かす、伝統的な西陣織や友禅染を使い、現代的なドレスをつくりたい」と心に決めたのはこの時だった。 1968(昭和43)年、西陣織や友禅染を使ったドレスのショーを神戸で開催して以降、神戸のファッション界の興隆に力を注いできた。 港都として発展を遂げた神戸。とりわけ1970年代から90年代にかけて、「山、海へ行く」がごとく開発が進んだ。ポートピア'81やアーバンリゾートフェアなど、神戸は成熟したかのように見えた。 しかし、その神戸を悲劇が襲う。 阪神・淡路大震災で、会下山の自宅は全壊。背骨を折る大けがをした。隣に住む大学生に助け出された。その時に「ああ、まだ自分にはやることがあるんだと思った」と語る。 それから2年、70歳を迎えた1997年に、パリ・オートクチュールコレクションに参加した。 その後、モナコやニューヨーク、フィレンツェでもショーを開催し、2018年には21年ぶりにパリでショーを行った。 藤本さんは、日本の伝統的な素材である着物や帯の持つ美しさを次世代に引き継ぎたいという思いを、西陣織や友禅染の技術を生かしたオートクチュールドレスに託した。 そして世界に誇る日本の魅力を発信する。 “人生100年時代”を体現する97歳の現役ファッションデザイナーとして、日本の伝統の着物地や帯地に「いのち」を吹き込み、新たにオートクチュールドレスを創作することで、日本美の伝統を世界に発信する。 南部靖之・パソナグループ代表はラジオ関西の取材に対し、オートクチュールドレスについて「芸術に年齢は関係ない。経験がものを言う。アートは美的感覚が歴史から紡ぎ出されたもの。和と洋が一緒になり姿を変えた芸術作。老若男女、夢と希望を持って生きていけば、さまざまな可能性が開花するという、藤本ハルミ先生のメッセージとも言える」と話した。 藤本さんは「私は97歳。同じ歳の人と、ここしばらく会ったことがないの。高齢化社会だけど、私のように街へ出る(同世代の)人がいないからね」と笑う。 仕事を依頼されると「時間が経つのを忘れて創作に没頭してしまう」と藤本さんが話した、今回のオートクチュールドレスは、京都・祇園祭の山鉾巡行が描かれた生地や、染織家として初めて人間国宝となった三代目田畑喜八による生地など、デザインは多彩。20着にのぼる。 藤本さんは大阪・関西万博に向けて「東京一極集中と言われて久しい日本。関西から日本文化を発信したい。『やっぱり関西(上方)はすごいな』と思ってもらいたい」と意気込みを語った。 オートクチュールドレスは、大阪・関西万博のパソナグループのパビリオンでVIPアテンダントが着用する。 万博閉幕後は、淡路島へ移設されるパビリオンに隣接するホテルで、同様に活用される予定。 ・・・・・ パソナグループが出展する大阪・関西万博パビリオン『PASONA NATUREVERSE』は、「いのち、ありがとう。」をコンセプトに掲げ、世界初のiPS 細胞による心筋再生医療を実用化した澤芳樹氏(大阪大学名誉教授・大阪警察病院院長)をエグゼクティブプロデューサーに迎え、「からだ・こころ・きずな」をテーマに様々な展示を行う。 新型コロナウイルスの感染拡大を経て、世界中で“生と死”に向き合ったからこそ、パビリオンを『PASONA Natureverse』(NatureとUniverseの合成語)と名付けている。 そして「心臓(いのち)の螺旋(らせん)~アンモナイトからiPS心臓まで~」と題し、建築家・板坂諭氏がデザインを担当する。 敷地面積は約3500平方メートル、延床面積約2300平方メートル。鉄骨造り・2階建て。万博開幕まで約2か月と迫る2025年2月の完成を見込む。
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