小池新都知事誕生で起こせるか 目玉政策に挙げた東京“無電柱革命”
工事着手から完了まで400メートルで7年 費用は1キロ4~5億円も
オーソドックスな工事で電線を地中に埋設する場合、工事着手から完了まで400メートルで7年の歳月が必要になるといわれます。道路に電柱を地中化するだけなのに、そんなに時間がかかってしまうのは、権利関係が複雑だからです。 道路を管理するのは主に地方自治体ですが、電線の管理者は電気事業者、通信ケーブルは通信事業者といったように無電柱化を進める上で多数の管理者・事業者が関係しています。地中への埋設工事には、水道事業者やガス事業者などとも調整をしなければなりません。事情をさらに複雑にしているのが、公道から各家庭への引込管の設置です。引込管は民地に設置されるので、公道のような一括で工事をすることが難しく、それぞれに手続きや工事をしなければならないので時間がかかってしまうのです。 また、工事中も各家庭への電気や通信を止めることはできないので、既存設備を継続させながら移設工事をします。そうした工事の方式が、無電柱化を厄介にしているのです。そして、無電柱化を推進する上で、もうひとつネックになっているのが工事費用の問題です。道路の規模や地形によっても変わるので一概には算出できませんが、1キロメートルあたり4~5億円かかるといわれています。
法整備で無電柱化を後押し 衆院議員時代牽引役だった小池氏が都知事に
「これまで電線の埋設は、電気事業者や通信事業者の自己負担で工事がされてきました。そのため、都心部の限られたエリアでしか、無電柱化はされていなかったのです。状況が一変したのは、1995(平成7)年に電線共同溝の整備に関する特別措置法が施行されてからです。同法によって、電線共同溝の整備が進むことになりました。電線共同溝とは、道路管理者が管路を建設し、そこに電気事業者や通信事業者が電線やケーブルを設置する方式です。これにより、電気事業者や通信事業者の工事費負担が軽減されることになったのです。」(同) しかし、都内だけでも電柱は約75万本もあります。いくら負担が軽減されたといっても、すべてを無電柱化するには莫大な工事費が必要になります。また、地方都市は無電柱化の流れに反して、年7万本のペースで電柱が増加しています。そのため政府は2016(平成28)年4月から緊急輸送道路に電柱を新設できないように道路法の一部を改正しました。 さらに、自民党内では無電柱化推進法案を制定して、無電柱化を加速させることも検討しています。この無電柱化推進法成立の牽引役を担っていたのが、衆議院議員時代の小池百合子新都知事だったのです。小池都知事が誕生したことで、都内の無電柱化は一気に進むと思われます。 小川裕夫=フリーランスライター