マイナス金利のなぜ?
通常、名目の金利はマイナスとはなりません。ところが、10月23日実施の国庫短期証券(3カ月物、新規)入札で初めてマイナス金利(-0.0037%)となりました。また、24日に行われた日銀の国庫短期証券買い入れの一部が、マイナス金利で落札されたもようという報道がなされています。 国庫短期証券とは、政府が短期的(1年以下)な資金繰りのために発行するものです。たとえば、為替介入を行う場合は、国庫短期証券を発行して得た資金で為替取引(円・ドル売買)を行っています。そのため、財政赤字を賄うための長期国債発行とは異なります。 金利がマイナスの場合、預金については、お金を預けるよりも手元に現金で保有しておいたほうが得になります。借りる場合は、利子を払うのではなく受け取ることになるので、できるだけ借りるのが得です。どちらも銀行から資金が出ていく方向なので、取引が成立しません。 現在、日銀は量的・質的金融緩和を行っており、その手段の1つが国庫短期証券の買い入れです。10月時点では約49兆円保有しています。量的な政策であるため、価格である金利は度外視して国債を購入しており、それに民間金融機関も呼応してマイナス金利となったのです。通常はない取引を、市場原理から外れた日銀が成立させているといえます。 そうまでして供給した資金は、金融機関の日銀口座に積み増されます。また、間接的に政府が有利な条件で短期の資金繰りを行うことができるようになります。このような取引には問題が生じ得ます。ただ、今回、マイナスとはいえほぼゼロ金利のため、私たちの生活にすぐに大きな影響を与えるものではありません。 また、この状況が続くのは問題ですが、おそらく一時的です。最近の動きには、米国の国債金利低下が背景にあります。例えば、米2年国債は9月26日の0.59%から、10月21日には0.38%へと比較的大きな下落となっています。日本の2年国債もゼロに近づき、そのほかに長期金利も下落しています。 米国の短期金利はこの1年、やや上昇傾向にありましたので、今後米国経済が落ち込む見通しとならなければ、金利もその傾向へと戻るのではないかと思います。このとき、日本のマイナス金利も解消されるはずです。