マツダ スタジアムから核廃絶と世界平和へプレーボール。担当者が語るピースナイター発足の裏側
今年も核廃絶と世界平和を願う『ピースナイター』が、8月14日にマツダ スタジアムで行われる。ここでは、17回目を迎える『ピースナイター』のこれまでの歴史と意義、裏側についてを、ピースナイターを主催する『生協ひろしま』担当者の声とともにお届けする。 【写真】2024年のピースナイターは、8月14日に開催される ◆ピースナイターとは? 2008年から(2008年のみ「折りづるナイター」) 「生協ひろしま」が“核廃絶”を目的として始めた取り組み。以降、広島東洋カープをはじめとした実行委員会が設立され、開始以降毎年行われる取り組みとなっており、今年で17回目を迎える。 原子爆弾が投下された8月6日やその前後のNPB公式戦開催日(カープ地元開催試合)で行われ、カープの監督・コーチ・選手と審判員が肩袖にピースナイターワッペンを着け試合を行う。 5回裏後イニング間にはピースナイター新聞を掲げ、平和の象徴として球場全体を緑色に染め、原爆ドームと同じ高さとなる25m地点には広島復興の象徴であるカープの色をイメージした赤色で“ピースライン25”を表現する。(“平和の色”について市民アンケート結果から、緑色が採用される) また始球式には、これまで被爆者や、2世、3世、4世などが、この記憶が風化しないよう“伝承者”として登板している。 ◆ピースナイター発足の足跡 生活協同組合ひろしま執行役員 組織本部 本部長補佐 (兼)総合企画部 統括部長 桐原光広さん 私は2008年の立ち上げから2011年まで担当者として、関係者の皆様のご協力の下、「ピースナイター」を運営してきました。 私の両親も戦争経験者であり、小学生の頃、1975年のカープ初優勝のパレードを見に行きました。そこには、原爆で命を落とされた方々の遺影を持って参加されている方が、涙を流しながら喜ばれている姿があり、子どもながらに“カープっていいな”と思ったものです。それだけカープは、私たち市民にとって希望の光でした。2008年当初は、立ち上げということもあり、「球場でそのようなことをするのはどうなのか……?」など賛否両論もありました。 しかし当時、山形県ご出身の栗原健太選手(現・ロッテ二軍打撃コーチ)が、奥様が広島県のご出身ということもあり、『原爆』についてを考える機会となったとブログで発信してくださったのです。選手の方々にとっても、8月6日が広島にとってどのような日であるのかを理解し、発信してくださるようになることで、カープファンの方々にも認知されるきっかけになっていると思いますし、ご協力いただく皆様へ感謝しております。 現在も世界から戦争がなくなることはなく、たくさんの問題を抱えていると思います。広島に原子爆弾が投下された年に14万人もの方が亡くなられたと言われています。戦後79年を迎え、実際に被爆した“証言者”の方々が亡くなられている中、私たちの今後の課題として、二度とこのような惨事を繰り返さぬよう、“伝承者”として、私たちもこの取り組みを伝承していきたいと考えております。 広島県に住む私たちだからこそ、発信できることがあると信じています。 ◆担当者に聞く、2024年の「ピースナイター」 生活協同組合ひろしま 総合企画部 くらし応援グループ 統括課長 大上建良さん/組合員活動 担当係長 石井理絵さん 実行委員会(生協ひろしま、広島東洋カープ、中国新聞社、広島平和文化センター、広島電鉄、中国放送)の皆様と毎年、運営に関する取り組みを決める会議を行います。その後各社がそれぞれの役割を実施していきますが、私たちは主に企画、運営を担います。皆様のご協力もあり、今年で17回目を迎えることができ、認知も広がっていると思います。その上でこれまで続けてきたことを維持していくこと、さらに進化させていくことが重要になってきます。 毎年ボランティアとして多くの高校生、教員、組合員が参加してくださいます。そのあ中で、昨今は海外の方もマツダ スタジアムに訪れることが多くなり、海外の方へも「今日はどういう取り組みが行われている試合なのか」ということを伝えることが重要であると考えています。 「This event wishes for the Peace and abolition of nuclear weapons Through our baseball game at Mazda Zoom-Zoom Stadium Hiroshima」(このイベントはマツダスタジアムから野球を通して平和と核兵器廃絶を願う試合です) 小さなことかもしれませんが、その小さな取り組みを、同じ空間を共にしている方々へ、私たちが伝えていくことで“平和”につながっていくと感じています。その結果、今回から初めて英語での案内を入場ゲートで実施することとなりました。 スポーツは“平和”であるからこそできるものであり、今私たちがこの場にいられることに感謝して生きていこうと伝えること、きっかけをつくることが、裏方としての任務であると感じています。 本年も実行委員会、ボランティアの皆様、球場に来場される両チームのファンの皆様、そしてこの日試合をご覧になられる皆様の思いを込めて、私たちはこれからも伝承していきたいと考えております。
広島アスリートマガジン編集部