18番まで10分超、日本一長~い校歌、最後まで歌える?高校同窓会が「深掘り」へ
長野県の諏訪清陵高校 第1、第2校歌合わせて歌うと10分超
「日本一長い」とされる校歌がある。長野県諏訪市の諏訪清陵高校の校歌だ。第1、第2校歌合わせて18番のボリュームで、序章と終章を合わせると20番ともされ、全部歌い切るのにかかる時間は10分超。あまりの長さに、テレビ番組で紹介されたこともある。1903(明治36)年の校歌制定から120年が過ぎ、2025年が高校創立130周年に当たることから同窓会茅野支部は2月10日、卒業生が集い、校歌を「深掘り」する講演会を開く。先人たちが長~い校歌に込めた意味を読み深めつつ交流する予定だ。
第1校歌作詞は都立小石川初代校長
8番まである第1校歌「東に高き」を作詞したのは諏訪市出身の教育者、伊藤長七(1877~1930年)。都立小石川中等教育学校の前身、東京府立第五中学校(五中)の初代校長で、島崎藤村(1872~1943年)と交流があり、小説「破戒」に登場する教師・土屋銀之助のモデルともされる。 一方、10番ある第2校歌「ああ博浪の」を作詞したのは茅野市出身の中島喜久平(1883~1914年)。卒業生の中島が旧制一高(現東京大教養学部)に在学していた1903年に校歌に制定された。 例えば第2校歌の歌詞はこんな感じ。<ああ博浪(ばくろう)の槌(つい)とりて 打破せむ腐鼠(ふそ)の奴(やつ)ばらが 弥生半ばのこの夢を> 「博浪の槌」とは、中国最初の統一王朝・秦の始皇帝(紀元前259~同210年)によってほろぼされた韓の忠臣・張良が恨みをはらすため始皇帝に向けて投げつけた鉄槌の故事にちなむ。その場所と伝えられるのが中国河南省原陽県博浪沙だ。 極めて難解で覚えるのに苦労するが、卒業生らによると、文化祭でも入学式や卒業式でも必ず通して歌われてきた。大きな声で歌っているうちに詞や曲が心にしみわたり、連帯感や士気が高まっていくという。
同窓会「先人の思いを伝えていきたい」
講演会当日は諏訪清陵高で国語教員として勤め、勤務時から母校の校歌を研究する武井美博さん(68)が登壇する。武井さんによると、中国の故事にまつわる一節からは当時のエリート層の教養が垣間見える。武井さんは「校歌を持ち上げ過ぎないようにしつつ、さまざまな世代の卒業生同士が交流するきっかけにしたい」と話す。茅野支部長の田村義明さん(75)は「同窓生が一つになれる校歌。校歌に込められた先人の思いを伝えていきたい」と願っていた。