〝歌う宅配便〟寺本圭佑、新曲「ほおずり」が有線リク1位に
歌える場所さえあればどこへでも飛んで行きマイクを握ることから〝歌う宅配便〟の愛称で知られる奈良市出身の歌謡曲歌手、寺本圭佑(47)。4月発売の新曲「ほおずり」が〝有線歌謡曲リクエストチャート〟で1位を獲得。その勢いを保ったまま大阪・アメリカ村のライブハウスBIGCATで開かれた「大阪発流行歌ライブ」に出演した。
軽妙なトークで笑いを誘いながら、歌に移ると場内の空気感が一転する。作詞・鮫島琉星、作曲は師匠の小田純平コンビの連続3作目に当たる「ほおずり」は、亡き母の通夜と葬儀の情景を描いた切ない内容。歌謡曲には珍しく「棺」という歌詞があり、最後は出棺の時に霊柩車が鳴らす長いクラクションの音色を本物から収録する念の入れよう。フォーク調のメロディーは明るく叙情的だが、葬儀場での母子の臨場感が聞く人の心を揺さぶる。 2021年初夏、新曲「望郷本線」の歌詞内容が現実となったかの様に父(享年71歳)のがん死に遭遇した。同時に日本中がコロナ禍に覆いつくされ得意の実演を自粛せざるを得ない理不尽な状況に追い込まれた。自身を取り巻く環境の変化に、寺本の歌唱はガラリと変わった。それまでのように「うまく歌おう」とせず、歌詞をしっかり伝えるスタイルになった。この曲も歌詞を伝える気持ちを前面に据え、湿っぽくならず曲を紡いだ。続く22年秋の「折鶴夜曲」は、先立つ妻の切ない思いを曲にした内容。月刊カラオケファン選定「最も歌われた男性演歌曲」に選ばれ、年末には日本作詩大賞に入選。演歌・歌謡曲に恋の別れは付きものだが、肉親の死による永遠の別れが3作続くのはこの世界ではまず例がない。 「キャンペーンに行くと、お客さまから声を掛けて頂く機会が増えました。〝ラジオで聞いてジーンとして、お顔を見たくて〟とか〝有線で聞いて実感過ぎて涙が出て〟と説明して下さる。歌手みょうりに尽きます」と口元を引き締めた。
ライブ終わりのCD即売で、ファンと交流するうちに陽気な素顔に戻れる。「曲間のトークは元々長い方。フォーク歌手の方のライブでは曲との切り替えが皆さんお上手。僕もライブ全体を楽しんで頂きながら、お客さまの心に曲を残せる歌手を目指す、という目標がはっきりしてきました」と今日も全国を忙しく駆け巡っている。 (畑山博史)