「自分なしではチームが回らない」悩む人への助言 限界が来るまで頑張る前に試してほしいこと
まず、状況をもう一度説明してもらい、次にその従業員の質問に対する僕の答えを述べた。ただしそれよりも重要なのは、僕の答えの背後にある考え方をみんなに理解してもらうことだった。 「この場合、全額返金してもいい。たしかに会社は少し損をする。でも、特別大きな損失を出さない限り、顧客を幸せにすることを一番大切にしよう。これが、CDベイビーの考え方なんだ。 それに、こうした小さな出来事で、そのミュージシャンは周りに「CDベイビーはすごくいい会社だ」という良い評判を伝えてくれるかもしれない。僕たちの使命はまず、ミュージシャンの助けになること。利益はその次でいい。
これから同じような状況が起こったら、この考えを基準にして、各自がその場で判断してくれてかまわない。ミュージシャンにハッピーになってもらえることをしよう。僕たちと関わる人を、みんな笑顔にしよう」 僕は、全員にこの考えを理解してもらったことを確認した。 そして、従業員の1人に、こういった状況に対する回答と、その背後にある考え方を、マニュアルとして書いてもらった。 それから、みんなまた仕事に戻った。 10分後、別の質問をされた。今回も、同じプロセスを繰り返した。
1 全員を集める。 2 質問への答えを述べ、その背後にある考え方を説明する。 3 全員にその考え方を理解してもらったことを確認する。 4 誰か1人に、質問とその答え、背後にある考え方をマニュアルに書いてもらう。 5 次に同じような問題が起こったら、僕抜きで判断をしていいと全員に伝える。 これを2カ月続けた結果、僕への質問はなくなった。 僕は、自分が担当していた残りの仕事のやり方を従業員に教えた。その際、それをマニュアルに書き、それを使って別の従業員にも教えてもらうようにした(誰かに教えることで、教えた側の理解も深まるから)。
これで、僕がいなくても、CDベイビーの業務は回るようになった。 ■経営者のマインドセットとは チームがビジネスを運営してくれるようになったので、僕はビジネスを改善する作業に集中できるようになった! 1日10時間以上働いていたのは以前と同じだった。だけど今は、その時間のすべてを業務の改善や最適化、改革に費やせるようになった。これは僕にとってとても楽しいことだった。 それは仕事ではなく、遊びだった。
僕がオフィスに出社しなくなってから、CDベイビーは4年間で売り上げが100万ドルから2000万ドルに、従業員が8人から85人に成長した。 自営業者のマインドセットと経営者のマインドセットのあいだには大きな違いがある。 ビジネスオーナーが自営業者マインドに縛られていると、「自分が休むとビジネスが回らなくなってしまう」という恐れから、休めなくなってしまう。 これに対し、真の経営者マインドがあるビジネスオーナーは、戻ってきたときにむしろ経営が上向いているような形で、1年間、会社を離れられる。
デレク・シヴァーズ :CDベイビー創業者、ミュージシャン