【解説】会社の“負担増”で…従業員の保険料の負担軽減も 「106万円」の次に「130万円」の壁 主婦・主夫の年金にも影響
厚生労働省は15日、「106万円の壁」の見直し案を提示した。これには、従業員の手取り減少を避けるため、企業の社会保険料負担を増やす案が含まれている。しかし、これにより企業側の負担が増える懸念があり、事業主から不安の声が上がっている。 【画像】15日の部会で提示された「事業主の負担の割合を増やす」案
将来の年金が増えるメリットも…保険料負担に不安の声
106万円の壁を見直すことで、夫婦の一方が扶養の範囲内で軽く働きたいといういわゆる「主婦・主夫」の年金にも影響が出てきそうだ。 青井実キャスター: 「106万円の壁」の見直しでどうなるか、メリット・デメリットを見ていきましょう。メリットは、従業員も事業主も将来貰える年金が増えると言われています。 デメリットは、従業員の場合は保険料が増えるわけですから、負担が大きくなるんじゃないのか、事業主の方も保険料を従業員と分担するわけですから、負担が増えるんじゃないのか、こういったデメリットがあるそうです。 SPキャスター中村竜太郎さん: せっかく見直しをしているわけですから、メリットよりもデメリットが極力小さい方がいいので、本当に今一度ちゃんとシステム作りというのを考え直した方が良いと思います。 青井キャスター: 共働き世帯などから、不公平感があるという声もあります。「106万円の壁」の見直しの狙いについて社労士・税理士の渋田貴正さんによると、徴収する保険料を増やすことで、社会保険財政の安定化、老後の備えを手厚くするメリットがあるということです。一方で、保険の支払いが大変になってくるわけです。
事業主の負担増案
15日の部会では、事業主の負担の増加について新たな案が出されている。 遠藤玲子キャスター: 15日の部会では、働く側が少しでも手取りの金額が減ることを避けるため「事業主の負担の割合を増やす」案が示されました。現在の保険料負担は、原則として事業主と従業員で50%:50%の折半ですが、部会で出た「事業主の負担の割合を増やす」という案では事業主側と合意があれば、例えば事業主60%:40%従業員であったり、事業主80%:20%従業員のように、従業員負担を軽減していくという案になっています。 青井キャスター: 従業員のデメリットを和らげようということですが、事業主側の負担が増えそうですね。 遠藤キャスター: 15日取材させていただいた90人以上のパート従業員がいる東京・足立区の訪問看護の会社「訪問介護ステーション ブロッサム」では、「お金の問題は確かにあるが、従業員のリストラはしたくない。働き方を一緒に考えながらお付き合いをしていく」ということです。また、訪問看護ならではの悩みとして「サービスの利用者にとっては年収の壁は関係のない話。問題があることによって利用者に不安を与えてしまうおそれもある」と話してくれました。 青井キャスター: 1人あたり働く時間が増えて、例えば従業員の人数を減らすとなったら困るわけです。従業員を助けようとした仕組みが作られるのは良いことのようですが、しわ寄せもあります。会社の負担が増えることで、結果的に働く側に不利益がないようにしてほしいですね。 SPキャスター中村竜太郎さん: 日本は圧倒的に中小企業も多いので、事業主は結構な負担がかかってしまう可能性があります。従業員の割合をどう決めていくのか、すべて一律ではなく柔軟に対応することも必要だと思います。 青井キャスター: そして、忘れてはいけないのが「106万円の壁」の先にある、「130万円の壁」つまり従業員50人以下の企業です。 遠藤キャスター: 厚労省は、第3号被保険者制度ついて「今後さらに縮小の方向に向かっていく。中には働くことが難しい人もいて、制度のあり方や今後のステップを考えていくのが今後の論点」としています。 青井キャスター: いずれにしても、見直す限りデメリットがあるというと良くないと思いますよね。 SPキャスター中村竜太郎さん: なるべく最大限、我々も納得できるようなメリット、そのシステム作りというのをいろいろ議論しながら進めていってほしいと思いますね。 青井キャスター: 年金という形で未来に欲しい方もいれば、今欲しい方もいらっしゃいますし、家庭が共働きの家庭だったり、いろんな家庭のケースがあるので誰かがこぼれ落ちないように誰かが損をしないように、一生懸命考えていただきたいなと思います。 (「イット!」11月15日放送より)
イット!