山田うん × 池上高志「Wild Wordless World」＜ワークインプログレス＞（2023年）より （撮影：HAL KUZUYA）

KAAT神奈川芸術劇場がおくる2024年9月から2025年3月のメインシーズン。タイトルを「某（なにがし）」とし、シェイクスピア作品から日本文学の舞台化、現代のテクノロジーと身体を問う実験的なプログラム、新作戯曲、国際共同制作など多彩なラインアップを組む中で、10月、12月に上演するダンス公演が注目を集めている。 【全ての画像】山田うん × 池上高志「Wild Wordless World」＜ワークインプログレス＞（2023年）より まず、10月18日(金)～20日(日)にKAAT 神奈川芸術劇場＜ホール内特設会場＞で上演されるのは、KAAT×山田うん×池上高志『まだここ通っていない』。振付家・ダンサーの山田うんと人工生命研究者の池上高志による、コンテンポラリーダンスと先端科学のコラボレーションは、人間とサイエンスの関係、またアートとサイエンスの関係を探す取り組みだ。 2022年からふたりが続けているプロジェクトの第2弾に位置付けられる今回の作品。ダンサーたちと原初的なロボットやドローンの群れとの共生、あるいは身体を持たないAIとの会話などを通して、ラベルを貼られていないむき出しの「生き物」あるいは「ひと」の存在を浮かび上がらせ、KAAT2024年メインシーズンのシーズンタイトルである「某」を照らすという。 今回のプロジェクトのテーマは“記憶”。ふたりは、考えをこう寄せている。 「わたしたちの記憶は、脳の中だけではなくて、自分の身体に、服や食べ物に、空の色や風の匂いのところに、しまわれている。だから、プルーストの失われた時を求めて、のプルーストは至るところで起こりうる。それは忘れた記憶だけではなくて、まだ行ったことのない場所も気がつかせてくれる。新しい記憶は、記憶によって作られる。それは、AIの時代、大幅に忘れ去られてしまったかもしれない。でも、ダンサーは覚えている。この舞台を通してそのことにもう一度頭を巡らそう」 常に人間のからだを使い創作する山田うんと、常に人工生命について考える池上高志が、KAAT 神奈川芸術劇場のホール内特設会場で“記憶”をテーマにスパークする、実に刺激的な場となりそうだ。 また2024年の締めくくり、12月13日(金)～15日(日)に同劇場＜大スタジオ＞で上演されるのが、KAAT×ケダゴロ×韓国国立現代舞踊団『黙れ、子宮』。韓国国立現代舞踊団(KNCDC)と KAAT 神奈川芸術劇場の国際共同制作により実現する、気鋭のダンスカンパニー・ケダゴロを率いる下島礼紗の新作ダンス公演だ。 振付・演出・構成を担う下島は、1992年生まれ。2013年にケダゴロを結成し、オウム真理教や連合赤軍のリンチ殺人など集団における狂気や同調圧力をテーマにした『sky』(2018) や、殺人事件で指名手配を受けた整形逃亡犯・福田和子を取り扱った『ビコーズカズコーズ』(2021)など、常にジャーナリスティックな視点をもって創作にのぞみ、観客に強烈な印象と鮮烈な問いを投げかけてきた。2021年11月、韓国国立現代舞踊団（KNCDC）の委嘱を受け彼女自身の身体性にフォーカスを当てて創作した『黙れ、子宮』（英題:『Shut Up Womb』）は、下島が、自身の身体を韓国の文化の中で読み直して得た「気付き」から始まっているという。本公演では 2021年発表の作品をベースに 2024年度版としてさらに進化させながら再創作。韓国のダンサーと、ケダゴロのメンバーを含む10名の日本のダンサーが壮大に綴る新作として立ち上げる。 自分自身は何者であるのかという問題に正面から向き合い、身体表現を通して、家族という規範の解体や分断、あるいは血のつながりや家族という枠組みから抜け出さざるを得ない個の在り方について、私たちに問いかけてくるだろう。 なお、8月18(日)には、このふたつの公演を対象とした、通常より早く、お得に購入できる、KAAT神奈川芸術劇場2024年度メインシーズン「某（なにがし）」＜2期＞シーズンチケットが発売される。 ＜公演情報＞ ■KAAT×山田うん×池上高志 『まだここ通ってない』 構成・演出：山田うん、池上高志 2024年10月18日(金)～10月20(日) 会場：神奈川・KAAT神奈川芸術劇場＜ホール内特設会場＞ ■KAAT×ケダゴロ×韓国国立現代舞踊団 『黙れ、子宮』 振付・演出・構成：下島礼紗 出演： Lee Kyunggu Lee Daeho Im Sojeong 下島礼紗 木頃あかね　小泉沙織　中澤亜紀(ケダゴロ) 大貫桃加　小野寺夏音　小島優花　鈴木菜々　麗羅 ほか 2024年12月13日(金)～12月15日(日) 会場：神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ＜大スタジオ＞