カープ戦力外→マーリンズとマイナー契約 中村来生は「2%」の狭き門をくぐり抜けメジャー昇格を目指す
マーリンズはエウリー・ペレスやエドワード・カブレラなど好投手を台頭させてきた。中村はラティーノの彼らと同様に、ドミニカ共和国のルーキーリーグ(8軍相当)からスタートする。 「ウチの球団はピッチングだけでなく、バイオメカニクス、食事、栄養、メンタルなどすべてのことを理解して、野球だけでなく人生の成長につなげていくことを目的としている」 オカンポGM補佐がそう話すように、常夏のドミニカにあるアカデミーには10代後半で契約したラティーノがおもに在籍し、野球やトレーニングに加え、英語やアメリカ文化の授業も行なわれる。 【才能発掘に重要なのはタレント性】 筆者は2013年にパドレスとガーディアンズの現地アカデミーを訪れたが、どの球団も広大な施設で練習やトレーニングを効率よく行ない、ラティーノの好物である肉と豆を中心とした食事が提供される。日本でたとえるなら、春季キャンプを常に行なっているような環境だ。 ドミニカのサマーリーグは2カ月半で72試合が行なわれ、その後、中村はドミニカの教育リーグに派遣される予定だ。 21歳の中村は"オールドルーキー"の位置づけだが、オカンポGM補佐はそうした色眼鏡では見ていない。だからこそ、これまで数々のタレントを発掘できたのかもしれない。 「才能を発掘するうえで重要視しているのは、年齢ではなくタレント性の豊かさだ。ロネル・ブランコ(アストロズ)は22歳で契約し、今はメジャーで活躍している。そういう選手にもチャンスがあるので、年齢ではなく、タレント、スキルの豊かさが重要だと思う」 8軍相当のドミニカ・ルーキーリーグからメジャーリーグに昇格できるのは2%程度と言われる。食事も言語も考え方も異なるラティーノに囲まれ、ある意味、中村にとってNPB時代以上に険しい道だ。 だが、マーリンズに可能性を見出されてチャンスを得た。新しい世界で自身の可能性を高めるには、どれだけ前向きに臨めるかがカギになるだろう。
その意味で、5月20日の会見では心強い言葉が聞かれた。 「アメリカでやる野球が新しい体験だったので、とにかく楽しかったです。野球を楽しくやるのが、うまくなるための一番近道だとあらためてアメリカで思ったので、日本でやるよりアメリカでやってみたい気持ちが今は一番強いです」 日本で育成選手としてひと区切りをつけ、アジアンブリーズで野球の原点に立ち返った。さらに異なる環境のドミニカに渡り、自身の可能性をどう膨らませていくのだろうか。 まだ無名投手の中村来生は、大きな夢を追って新たな一歩を踏み出す。
中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke