第93回選抜高校野球 上田西、延長戦で惜敗 エース左腕162球好投 /長野
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)で大会第4日の23日、第3試合に登場した初出場の上田西は延長十二回の末、0―1で広島新庄(広島)にサヨナラで敗れた。エース左腕の山口謙作(3年)が162球の熱投を見せたが、持ち前の強力打線が広島新庄の2投手を崩せなかった。惜しくもセンバツ初勝利は逃したものの、約350人の応援団の声援を背に、選手たちは最後まで懸命のプレーを見せた。【皆川真仁、遠藤龍】 「まず1勝して、昨秋の戦いが勢いだけではなかったと証明する」。全国屈指の強豪・星稜(石川)を降して初のセンバツ切符をつかんだ上田西ナイン。吉崎琢朗監督(38)の言葉を体現すべく、新チーム発足から45戦全勝を誇る広島新庄を相手に一歩も引かない好ゲームを展開した。 広島新庄の先発は花田侑樹(3年)。負傷で分析担当を買って出た依田治輝(はるき)(3年)の助言で、決め球のスライダー対策に重点を置いてバットを振り込んできた。初回、先頭の笹原操希(3年)が幸先良く右前打で出塁すると、母・まゆみさん(51)は「よかった。いつも通りのびのびしている」と笑顔を見せた。 犠打で走者を得点圏に進め、このまま強力打線が畳み掛けるかと思われたが、後続が断たれ無得点。その後も再三好機を作りながらも、花田の前にあと一本が出なかった。一方の上田西先発の山口謙作(3年)も危なげない投球を見せ、試合はゼロ行進が続いた。 最大の好機が訪れたのは八回表。1死二塁でここまで2安打の笹原に打席が回ると、広島新庄は左腕の秋山恭平(3年)にスイッチ。ボルテージが上がったアルプス席からは「一発でしとめてくれるよ!」と期待の声が上がったが、2者連続三振。両者無得点のまま延長戦に突入した。 互いに譲らぬ熱戦に、マネジャー兼新聞委員会の一員としてカメラを構えた桜林生成(きなり)さん(3年)は「早く決めてほしい。緊張しすぎて倒れそうです」と祈りを込めた。熱投を続ける山口に父・進さん(49)も「粘り強く投げている。いつか絶対打ってくれると思って投げていると(思う)」と期待したが、その願いは届かなかった。援護がないままタイブレークに突入する直前の十二回裏。2死一塁から花田にサヨナラ二塁打を浴びて、力尽きた。 悲願の春1勝には一歩届かなかったが、硬式野球部保護者会長の片平知之さん(48)は「みんなよくやってくれた。誰も文句を言う試合じゃなかった」と温かい拍手を送った。 ◇今春コーチ、弟応援 ○…「兄弟そろって甲子園に出られたことは本当にうれしい」。九回裏、大藪知隼(2年)が左翼手で途中出場を果たすと、兄の将也(まさや)さん(23)はスコアボードの「大藪」の文字を見つめてほほ笑んだ。2015年夏に主将として上田西に甲子園初勝利をもたらし、弟の応援で6年ぶりに聖地を訪れた。現在は母校の新潟医療福祉大でコーチを務め、4月に上田西のコーチに就任する。「勝つということは難しいと痛感した。全国のレベルが分かったので、次は上田西のレベルを押し上げたい」と再出発を支える。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇夏に成長した姿を 上田西 山口謙作投手(3年) 甘く入った162球目を捉えられた打球が右翼手の頭を越した。2死でスタートを切っていた一塁走者が本塁に生還すると、膝に手を突き、あふれ出す大粒の涙をぬぐった。 「立ち上がりが弱点。初回から100%以上の力をぶつけたい」。試合前の言葉通り初回のピンチを切り抜けると波に乗った。十一回まで与えた安打は5本。「ゼロに抑えれば打ってくれる」と打線を信じ、スコアボードにゼロを並べ続けた。 アルプス席で見守った父・進さん(49)も「いいピッチングをした。親としてはうれしい」と目を細めた。高校時代は捕手として活躍した進さん。新型コロナウイルス禍で息子が神奈川の実家に一時帰宅した昨年3月、自主トレーニングに付き合ったが、決め球のスライダーを捕球できなくなっており、驚いた。「上田西に来て本当に成長しました」 強打と裏腹に、課題とされ続けた投手陣だが確かな光明を見せた。「悔しさを忘れず、この舞台でまた投げられるよう夏、もっと成長した姿を見せたい」。この惜敗を糧にする。【皆川真仁】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 上田西 000000000000=0 000000000001=1 広島新庄 (延長十二回)