【現地発】長谷部誠、「特別なものだとは思っていなかった」現役最終日。偉大さを物語ったセレモニー
日本代表の元主将にしてブンデスリーガのレジェンド、長谷部誠は40歳で現役生活に終止符を打った。2024年5月18日、ブンデスリーガ最終節RBライプツィヒ戦(2△2)でフランクフルトサポーターらに盛大に見送られた男は、どのような心境でラストマッチを終えたのだろうか。【取材・文=林遼平】 【動画】長谷部誠に万雷の拍手!
ラストマッチの出場は後半AT
最後の最後までプロサッカー選手、長谷部誠だった。 前節のボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦の試合後、残りわずかとなったプロ選手生活に対し、心理的な変化があるかと問われた長谷部は、何度も「実感がない」と口にした。これまで長く続けてきた現役生活に終わりが近づいているのは間違いない。それでもシーズンが続く限り、自分のやることは変わらない。最終節までのラスト1週間も取り組みを変えることなく、「最後まで本当にサッカー選手であることを楽しみたい」という言葉が印象的だった。 迎えたプロとして最後の試合となった最終節のライプツィヒ戦。ベンチで待つ長谷部に出場機会が回ってきたのは、後半アディショナルタイムのことだった。叶うならば、もっと早い時間に出場して1分でも多くピッチに立つ瞬間を見たかった人は多かったはずだ。ただ、ヨーロッパリーグの出場権がかかっていた状況もあり、クラブの指揮官を務めるディノ・トップメラー監督は現実的な判断を下してギリギリまで出場を遅らせた。こういった状況になったことに対し、悔しい思いを抱えているのは他ならぬ監督やピッチに立っていた選手だろう。 もちろん、長らくサッカーキャリアを積み上げてきたからこそ、そういった人々の思いを長谷部は誰よりも理解している。最後の試合は数分間しかピッチに立てず、ボールに一度も触ることのないまま終わってしまったかもしれない。だが、そんなことに愚痴を言うこともなく、時に理不尽なサッカーというスポーツをしかと理解する凄みが長谷部にはあるのだ。 「サッカーをこれだけ長くやってきた経験上、そんなに物事がうまくいくことはないというのは自分の中でもわかっている部分がある。それはチームとしてもそうだし、僕個人としてもそう。もしかしたら、もっと試合に出られる時間が長くて、うまくお別れをできる可能性もあったかもしれないですけど、そんなにうまくいくもんではない。だから、そこに関してはまったく何も思っていなくて、こうして試合が終わって、スタジアム全体でお別れの雰囲気を作ってくれたことが非常に自分としてはありがたかった」 試合後には同じ日に現役引退をするセバスティアン・ローデとともに、記念のユニフォームや写真、そしてこれまでの二人の活躍をまとめた映像などが送られた。欧州のクラブチームを見渡しても、これだけ大掛かりなセレモニーをしてもらえる外国人選手はほとんどいないだろう。それもワンクラブマンでは無いことを考えれば、なおさらだ。今回のようなセレモニーを勝ち取ったことは、いかにクラブで偉大な存在だったかの証明である。