ウクライナのゼレンスキー大統領

　ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は１６日、最高会議（議会）で演説し、ロシアによる侵略を終結させるための「勝利計画」の内容を説明した。北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）加盟交渉プロセスの開始などが柱だ。ゼレンスキー氏は米欧の支持を取り付けようと奔走しているが、実現のハードルは高い。 【表】一目でわかる…ロシアの戦力はウクライナを圧倒している

　ゼレンスキー氏は「勝利計画は我々の立場を強くするものだ。その履行はパートナー国にかかっている」と強調した。計画をすぐに実行すれば、来年中には戦争を終わらせることができるとの見通しも示した。

　計画は５項目で、最初にＮＡＴＯ加盟に向けた交渉への「即時かつ無条件」の招待を挙げた。ＮＡＴＯはウクライナの将来的な加盟を支持しているが、加盟時期は示していない。長期化も見込まれる交渉を早期に始めるよう求めるものだ。

　米欧から供与された長射程兵器の使用制限の撤廃、欧州の隣国によるロシア軍のミサイルや無人機の迎撃といった内容も盛り込んだ。ただ、米欧にはロシアとの戦闘への関与が深まることへの慎重な意見も根強い。

　ゼレンスキー氏は９月以降、米欧首脳らに計画を説明してきたが、賛同を明言した国はない。現状で計画を公表したのは侵略が長期化する中、「勝利」への道筋を示し、国民に団結を求める狙いがあるとみられる。ただ、ＡＰ通信によると、ウクライナの野党議員は「パートナー国に対する願い事リストのようなものだ。現実味がない」と批判した。