アイリスオーヤマも参入 TPP見据え拡大するコメ輸出ビジネス
生活用品大手のアイリスオーヤマ(本社・仙台市)は2日、同社の展開する「低温製法米」をマレーシアに輸出すると発表した。同社がコメを海外に輸出するのは初めてで、7月中には現地で販売が始まる。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉妥結が現実化する中、アジア諸国の富裕層を対象に高付加価値米を輸出することで、農業ビジネス拡大を図ることが狙いだ。2012年には農業機械メーカーのクボタが香港に向けて新潟産コシヒカリの輸出を始めるなどの動きもあるが、コメの海外輸出に日本の農業の将来はあるのか。
アイリスオーヤマのコメ事業
生活用品メーカーであるアイリスオーヤマが、コメ事業に参入したのは2013年。仙台市の農業生産法人・舞台ファームと合弁会社「舞台アグリイノベーション」を立ち上げたのがきっかけだ。舞台ファームがアイリスオーヤマに注目したのは、その流通力だ。普通コメは地産地消され、地域をまたいで販売されることは少ない。そこで、アイリスオーヤマの全国に広がる流通網を用いることで、東北・北海道のコメを全国で販売することが可能になった。 一方アイリスオーヤマは、生活用品や家電・LEDで培った商品企画力と流通力で、コメの販売に進出できると感じていた。研究により15度以下の環境で精米・保管をするとコメの甘みが20%増すことを発見。それまで精米後は酸化していく一方だったコメを、精米直後の状態に保つことに成功した。品質を確保するため、全ロットのDNA、放射線量、残留農薬、カドミウム等を検査しているという。 そうして出来た商品が同社の「低温製法米」だ。始めはスーパーでの販路がなく、価格も高かったためなかなか売れなかった。そこで、同社が強みを持つホームセンターでの販売を始めたところ、車で買い物に来る客層にマッチし、売れ出したという。
拡大するコメ輸出ビジネス
近年、世界的な日本食ブームを背景に、コメの海外輸出は増えている。2014年のコメ輸出額は過去最高を記録。農林水産省は「攻めの農林水産業」をキーワードに掲げ、コメ・コメ加工品の輸出額を、2020年までに600億円と、2012年と比べ約5倍に拡大させる計画だ。