俳優・別所哲也が“紳士の中の紳士”である理由「ゴール設定はしない。毎日がスタートライン」
“2.5次元”や漫画原作ミュージカルからも学びを得たい
現在、2.5次元や今回の“ジョジョ”のような漫画原作のミュージカルが、若い俳優の挑戦の場にもなっており、若いファン層も生んでいる。様式美ともいえる名作舞台に立ってきた別所からは、どのように見えているのだろうか。 「これまで僕らは、アメリカのブロードウェイやイギリスのウェストエンドから来た『レ・ミゼラブル』のような作品を、どう日本の観客に伝えるかという部分でクリエイティブなアプローチを模索し、親子三世代、四世代に見ていただいてきました。一方、現在、若い世代を中心に人気を博している漫画原作の舞台などは、初舞台化のものも多くて、自分たちがゼロから作り上げていかなければならないという部分がチャレンジになると思います。そこに参加するにあたり僕らのような経験者が胡坐をかくことなく、これまでミュージカル界が築いてきた土台をチームのために役立てながらも、若い俳優さんたちから僕らが教えを乞うことも多いと思います」 さすが“紳士の中の紳士”! 「ジョースター卿ですから(笑)。でも当たり前のことですけど“相手ファースト”は紳士の基本かもしれません。自分ではなくまず相手を思いやる。それは武士道にも通じるように思います。僕も守りたい“紳士の教え”ですね」 若い人からも学びたいという別所の姿勢は、新しいものに対する好奇心にも現れている。 「世の中には常に現在進行形で面白いことがいっぱいありますから。興味が尽きることはないんじゃないかな(笑)。長年、ラジオ番組もやらせてもらっていますが毎日新しい出会いがあるのも刺激になっていますし。先日、あるお医者様がおっしゃっていた話なんですが、人間って、ゴール設定をするより毎日、新しいスタートラインに立っているという気持ちのほうが長生きするらしいですよ。普通、何歳で定年して…とか、今は人生の第4コーナーを回ったとか考えるじゃないですか。それを聞いて僕もハッとしてしまって。確かに、ゴール設定をするとゴールを目指してしまう。新しいスタートラインに立って何かに向かって走っていると思った方が、新たな出会いも、より楽しめるのかもしれません。どうせ人間、生きていれば周りから勝手にゴール設定を押し付けられるわけですから。自分の気持ちくらいは自由でありたいですね。だから僕も“何歳で終い仕度をする”ということは考えず、いろいろなことに興味を持って、やりたいことは全部始めてみようと思っています。できるかぎり取っ散らかって死んでやろうくらいの気持ちで(笑)」 革新に向き合うことで、伝統の重みや自分の立ち位置を改めて知ることができる、と別所。 「最近、20世紀の文化の再検証や、様式美が見直されたりしていますし、この多様性の時代でも僕らが積み上げてきたものの多くが受け継がれていくと思います。そしてそれがまた、新しい時代の紳士道になっていくんじゃないでしょうか」 別所のもとにも、すでに期待の声が続々届いているという。 「“ジョジョ”ファンには絶対に見てほしい舞台になるはずですし、帝劇で数々の名作ミュージカルを見てきたファンのみなさんは新たな扉を開けることになるのでは。特に本作は製作陣もグローバルでボーダレスな布陣。しかも海外の人にも人気の“ジョジョ”ですから、大きな遠心力を持つ作品だと思います。韓国ミュージカルのように世界のお客様が、日本の漫画原作のミュージカルを日本に見に来てくれるよう、最高のクオリティでお届けしたいと思っています」 帝国劇場 ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』は2024年2月6日から28日まで日比谷・帝国劇場にて公演。 (TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)