時代の寵児から一転、土地や財産までも失ったストラヴィンスキーの起死回生の作品【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ストラヴィンスキー『兵士の物語』 ストラヴィンスキーの窮地を救った名作とは
今日4月6日は、20世紀最大の作曲家ストラヴィンスキー(1882~1971)の命日です。 ロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフ(1872~1929)に見出されて委嘱されたバレエ『火の鳥』が大成功を収め、続く『ペトルーシュカ』も成功。ロシア・バレエの第3作『春の祭典』の初演が“クラシック史上最大のスキャンダル”と呼ばれる騒動と興奮を引き起こし、ストラヴィンスキーは“音楽の革命児”として時代の寵児となったのです。 ところが、第一次世界大戦の勃発によって収入源を断たれた上に、10月革命によって祖国の土地や財産までも没収されてしまったのですから大変です。この窮地から脱出するために、ストラヴィンスキーが生み出した作品が、どこでも上演可能な小人数の「小さな旅劇場」作品『兵士の物語』でした。 「読まれ、演じられ、語られる」という副題のついたこの作品の珍妙な音楽からは、逆境にもめげなかったストラヴィンスキーの、強い意志が伝わってくるようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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