イスラエルとパレスチナ、なぜ争うの？

　パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲をきっかけにした攻撃の応酬は、双方の民間人を中心に1万数千人の死者を出しています。武力衝突は何度も繰り返され、イスラエルとパレスチナ、周辺アラブ諸国の間では4回にわたる中東戦争、イスラエルに投石などで抵抗する草の根運動「インティファーダ」などが起きてきました。国連のグテレス事務総長は10月の安全保障理事会で、「パレスチナ人は（第3次中東戦争以来）56年間、息の詰まる占領下に置かれてきた」と指摘しました。パレスチナ紛争はそもそも何が問題で、どうして解決しないのでしょうか。 【写真】パレスチナ自治区ガザ南部に避難した人々

ユダヤ人の「約束の地」って?

　約3000年前の紀元前10世紀、パレスチナと呼ばれる地中海東沿岸地域にダビデ王が古代イスラエル王国を築き、エルサレム旧市街に神殿が造られました。旧約聖書が編集され、ユダヤ教を信仰するユダヤ人のアイデンティティーが形成されます。エルサレム（シオン）は聖地、その東に広がるヨルダン川西岸地域は神がユダヤ人に与えた「約束の地」とされました。イスラエルがエルサレム領有に固執し、ネタニヤフ首相ら右派勢力が西岸のユダヤ人入植地の拡大にこだわる根拠です。

　ローマ帝国は1世紀に神殿を破壊。ユダヤ人の多くは欧州、中東などに離散しました。キリストがユダヤ教の指導者らと対立して処刑された経緯から、ユダヤ人は「キリストの殺害者」と見なされ、差別、迫害されます。エルサレムを含むパレスチナは7世紀以降、イスラム教徒の支配下となり神殿があった丘はイスラム教の聖地とされました。

　19世紀末、シオンでユダヤ人国家再興を目指すシオニズムに火が付きます。大英帝国が第1次世界大戦でアラブ人とユダヤ人の協力を得るため両者にパレスチナでの建国を支持し、フランス、ロシアとは中東分割で合意した三枚舌外交も影響しパレスチナに移り住むユダヤ人が増加、アラブ人と衝突が始まりました。

　第2次世界大戦後、ナチス・ドイツにユダヤ人約600万人が毒ガスなどで虐殺されたホロコーストが判明。国連は1947年、アラブ人とユダヤ人の二つの国を造るパレスチナ分割決議を採択しました。アラブ人に与えられたのはヨルダン川西岸とガザ地区を含むパレスチナ全域の43％。「欧州のユダヤ人差別のつけをどうして払わされるのか」と猛反発します。イスラエルは48年に独立を宣言、周辺のアラブ諸国に攻め込まれて第1次中東戦争になりました。