名人戦物語（２）～ついに、その時は来た。藤井新名人
藤井、名人奪取で七冠に
1935年（昭和10年）に始まった実力制名人戦。第１期は木村義雄八段が２年半にわたるリーグ戦を制して、名人の座に就きました。そして名人戦が盤寿を迎えた令和５年、藤井聡太新名人が誕生しました。名人戦は新しい時代に入ったのかもしれません。 【解答図】大記録に花を添えた、美しい投了図 現在、4月開催予定の第82期名人戦（主催：朝日新聞社・毎日新聞社）七番勝負の挑戦権をめぐってA級順位戦が進行中です。 本稿では2023年12月22日に発売された、『名人戦物語 実力制名人発足から藤井聡太名人誕生まで』（マイナビ出版）掲載原稿より、３回にわけて過去の名勝負、名場面を振り返っていきたいと思います。 第２回では、藤井新名人が誕生した歴史的１手を振り返ります。読者の皆さまも、対局者になったつもりで、次の１手を考えてみてください。 ■第81期名人戦七番勝負第５局、最後の１手 対局データ 令和５年５月31日・６月１日 第81期名人戦七番勝負第５局 長野県上高井郡高山村「緑霞山宿 藤井荘」 ☗渡辺明名人―☖藤井聡太竜王 ■指し手のヒント ついに、その時が来ました。藤井新名人、そして藤井七冠の誕生は令和５年６月１日午後６時53分。４六の角も６六の角も、あの場面からずっと生きています。次の一手を見て渡辺明名人が投了。歴史的瞬間が訪れました。
美しい投了図
■第２問解答 ☖８七銀 （解答図） ☖８七銀が鮮やかすぎる決め手でした。①このままなら、☖８八角成で簡単な詰み。②☗同銀は☖７九角成 ☗同金 ☖８八金。③☗同金は☖８八角成 ☗同金引 ☖７九角成 ☗９八玉 ☖９五香 ☗８七玉 ☖８八馬 ☗同玉 ☖８九金 ☗８七玉 ☖７八銀 ☗７七玉 ☖６五桂 ☗６六玉 ☖５五金 ☗同歩 ☖同飛成までとなります。 渡辺名人が投了した瞬間、名人の座は藤井へと移りました。谷川新名人も羽生七冠も歴史的重圧と戦いながらの対局でしたが、藤井はさわやかに、その壁を乗り越えました。その笑顔はあくまでも明るく、美しい投了図が大記録に花を添えました。
将棋情報局
