沈むニッポン…税収アップするならどの税を重くする? もしかしたら数百兆円狙えるかもしれない「富裕層にかかわりの深い税」とは
きょうだい間の相続なら、さらなる高率の課税を
筆者がとくに主張したいのは、きょうだいが相続する場合の大増税です。被相続人(亡くなった人)に子も親もいない場合、きょうだいに遺産が行くわけですが、これは大部分を税金で召し上げてしまおう、ということです。 子に相続させるために財産を遺したという人は少なくないでしょうが、きょうだいに相続させるために財産を遺したという人は少ないでしょうから、資産家からの不満は大きくないと思います。 受け取る側も、親の遺産を期待するのは自然なことで、子どもが増税に反対するなら世論の支持も得やすいでしょうが、きょうだいが遺産を当然の権利として主張して増税を反対しても、世論の支持は受けにくいでしょう。 筆者がきょうだいへの増税を主張する理由のひとつは、高齢者が受け取る年金にあります。日本の年金制度は、現役世代が支払った年金保険料を高齢者が山分けする仕組みになっているので、子のいない高齢者は他人の子たちに養ってもらっているわけです。そうであれば、使い残した分くらい次世代のために国庫に納めてもらうのが自然ではないでしょうか。 実利の問題もあります。近年、子のいない人が増えています。結婚しない人、結婚しても子がいない人が増えているということは、数十年経つときょうだい間での相続が激増するということです。もしかすると、数百兆円の相続税が得られるかもしれませんよ。 「相続税を増税すると、金持ちが海外に逃げてしまう」と心配する人がいるかもしれませんが、過度な懸念は不要でしょう。所得税の増税であれば、自分が困るので、高額所得者が海外に移住するかもしれませんが、相続税の増税であれば、「子どもたちのために海外に移住しよう」という人は多くないでしょう。 まして「きょうだいが相続税を払わなくていいなら、自分は喜んで海外に移住する」という人は決して多くないと思います。高齢者にとって、言語も習慣も異なる国への移住はハードルが高いでしょうから。 もしかすると、海外の無人島で日本企業による大規模開発が行われて、日本人の富裕層高齢者が大勢移住し、彼らのためのビジネスに従事する日本人の若者が移住し、日本人だけが住むコミュニティができるかもしれませんが(笑)。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義