大分商 センバツ振り返って 選手らの成長肌で感じ /大分
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場した大分商は、惜しくも作新学院(栃木)に敗れた。1997年以来の勝利とはならなかったが、ひたむきに努力する選手たちの成長を肌で感じる大会だった。 私が大分商の取材を本格的に始めたのは2023年1月。チームは児玉迅(じん)(3年)、飯田凜琥(りく)(同)の両投手を中心に22年の九州地区大会で4強入りし、センバツの吉報を待っていた。 グラウンドに足を運ぶと、主将の大道蓮(れん)(同)を中心に全員であいさつして迎えてくれた。冬の厳しい寒さのなか、九州地区大会で見えた体格差の克服のため、ウエートトレーニングやサーキットトレーニングなどで体を鍛えた。 とりわけ野手陣は、強い打球を打つために試合で使うバットより重くて長い「長尺」を使って素振りをし、体の軸を使ってバットを振る練習をした。強豪校の速球投手を想定して打撃用マシンの速度を140~145キロに設定して打ち込んだ。 作新学院は、夏の甲子園に10大会連続出場した強豪校。大分商は4点を先制され、終始リードされる苦しい展開だったが、随所に粘りを見せた。 六回は先頭の豊田顕(同)から連続4安打で1点、七回には渡辺公人(同)の犠打や2連続安打で2点を挙げた。見せ場は九回。四死球や暴投で1死二、三塁とすると、羽田野颯未(かざみ)(同)、江口飛勇(同)の適時打で2点を挙げた。 「打て」「いける」。アルプススタンドは熱気に包まれた。しかし、続く丸尾櫂人(同)の打球を左翼手が好捕して2死。既に二塁を回っていた一塁走者の江口が帰塁の際に二塁ベースを踏まずに戻り、相手のアピールでアウトになり試合は終わった。いつも明るく朗らかで感情を表に出す方でない江口が「反省を生かし、変わったところを見せたい」と涙ながらに語る姿を見て歯がゆかった。 センバツでは、結果を出せた選手、そうでなかった選手、悔し涙をのみ裏方に回った選手もいた。強豪校を相手に一歩も引かずに戦えたのは、那賀誠監督(55)が常々口にしていた「野球の技術だけでなく人間性を磨くべきだ」という言葉があったからだと思う。 選手は、正選手や控え選手にかかわらず互いを尊重し、できることを果たそうと一生懸命だった。この経験を糧に一回りも二回りも成長して、グラウンドを駆け回る選手の姿を見たい。心からそう思う。【神山恵】