UVERworldとBE:FIRST、音楽と人生への愛を叫んだ日 2組が熱い対バン、互いのカバーも披露
BE:FIRSTが伝える音楽への愛情 「在るべき形」カバーも
UVERworldが去って間もなく、「Mainstream」のイントロが流れると同時に、観客全員が歓声を上げる。帝王のようなブレない芯の力強さを感じさせるSOTAと、爆発的なエネルギーを全力でぶつけてくるRYOKI、重力を感じさせるエッジボイスで空間を支配するSHUNTO、しっとりとしながらも持ち前の明るさや軽快さを感じさせるLEO、流れるようになめらかな声色で聴く者の心を掴むJUNON、次々に表情を変え多様な表現を生み出すMANATO、最年少と思えない妖艶さで観客を魅了していくRYUHEI。それぞれが唯一無二の個性をギラギラに輝かせ、彼らの作り出す音楽で会場を飲み込んでいく。 1曲目の興奮の余韻をそのままに、息つく間もなく披露したのは「Masterplan」。ダークな雰囲気のダンスチューンの連続に、客席から再び悲鳴にも近いような歓声が上がる。特に鋭い眼光と繊細ながら太くしなる歌声、ダイナミックなダンスで世界観を描き出すRYUHEIは、一瞬で17歳だという事実を忘れさせる。メンバーが作り上げるぐっと重々しい雰囲気が、彼らが支配する音楽の世界へ、観客を一人残さず引きずり込んでいく。ピッタリ息があっているのに、それぞれの特異な表現が随所に感じられるダンスを見ながら、しばしば呼吸をするのを忘れてしまうほどだ。 SOTAとRYOKIのラップの掛け合いから始まった「Milli-Billi」。メンバーそれぞれがステージの端まで駆け寄り、少しでも近くで歓声を感じようとしているのがわかる。畳み掛けるように続く歌声に、自然と身体が動いてしまうといった様子のMANATOが印象的だ。彼らの音楽がなぜこんなにも聴く者の心を沸き立たせるのか、それは他ならぬ彼ら自身が音楽を心の底から楽しんでいるからこそだと実証しているようだ。 激しいドラムロールとともに、「Brave Generation」が始まった。「あんな熱いライブやったら興奮しねえわけねえじゃねえかよ!」とUVERworldにSHUNTOが激励を送り、その場にいた全員への愛と感謝とリスペクトを告げると、会場が共鳴するようにさらなる盛り上がりを見せる。メンバー全員が、歌唱中もつねに客席を指差し、目線を送る。それは単なるファンサービスではなく、観客一人ひとりと心を通わせようとしているように見える。さまざまな垣根を超えていく音楽の力と、そんな音楽を作り出しているBE:FIRSTのアーティスト性にリスペクトを示さざるを得ない。 観客全員が歌声を響かせたのが、続く「Scream」。〈最高が何なのか証明しよう/圧倒するこのステージ〉という歌詞よろしく、まさに圧倒的なサウンドで再び空気を掌握。音源とは違ったSHUNTOのがなり声が響き渡り、爽やかなロックナンバー「Set Sail」にバトンが渡る。「ちゃんと見えてるからな!」と後方の客席へも言葉を投げかけ、過去の5曲以上に自由にのびのびとパフォーマンスを楽しんでいく。終始笑顔でその瞬間を謳歌するLEO、RYOKIのパート中に指差しをして盛り上げるSOTA、つねに身体を揺らして音楽を味わうJUNON……。純粋に音楽を楽しむ7人が眩しい。そして絶えず、観客へともに音楽を楽しもうと誘い続けているのが、痛いほどに伝わってくるのだ。 彼らの表現には、あちこちへの敬愛が溢れている。「Boom Boom Back」のイントロでは、SOTAが「日本の音楽シーンをかっこいい歴史で埋めてくれたUVERworldのcrewの皆さんに、改めてビッグリスペクト!!」と声を上げていた。先人たちへの敬意を示し、日本の音楽への深い愛を持ち続けながらさらなる高みへ引き上げようとする彼らは、ストリートで純粋に音楽を楽しむ少年たちのよう。音楽、歌詞、感情をその身一つで最大限に表現しきる姿は、見るに美しい。 「ジャンルレス」というコンセプトというのはまさにその通りで、改めてBE:FIRSTの楽曲の幅広さに感服させられる。激しいラップとダークなボーカルラインで重厚感のあるSOTA、RYOKI、SHUNTOのユニット楽曲「Spin!」に続くのは、シックな空気を生み出すバラード曲の数々。それぞれのロングトーンが美しく鳴り響く「Salvia」、セクシーなメロディと切ない表情から目が離せなくなる「Grow Up」、メロウな歌声とマイクスタンドを使ったダンスが特徴のLEO、MANATO、JUNON、RYUHEIのユニット曲「Softly」だ。振り幅の大きさにただただ驚かされ、その魅力に誰もが抵抗する術もなく虜になってしまう。底なし沼に落ちていくような感覚とでもいうのだろうか。「今この瞬間、俺たちだけを見ろ」と、語らずともそう伝え人を動かす威力が、彼らには確かにある。 「Don't Wake Me Up」では、夜明けを予感させるようなMANATOの歌声が最初に響き渡る。前半であれだけ踊っていても、聴かせる歌声には一切の不安や揺らぎを感じさせない。爽やかなサウンドが少しずつ迫ってきて、サビではメンバーはもちろん、観客全員で飛び跳ねる。その光景は圧巻で、全員が心を一つにしているという事実が顕在していた。飛び跳ねて起きた振動すらも、音楽の一部なのだと錯覚するほど。メンバーも、ステージの端から端へ、交互に駆け回って観客全員と視線を交わそうとしている。空間に音と共感がこだまする、最高に心地よい時間だ。 「Shining One」の披露では、彼らの止まることを知らぬ進化を実感させられた。2021年のオーディション当時から歌い続けているこの曲だが、聴くたびに、観るたびにどんどん表現の豊かさを増している。新たな楽曲を生み出し続けながらも、彼らにとって大切な曲を何度も何度も身体に落とし込んでいるのが、そのパフォーマンスから見て取れるのだ。そしてそれこそまさしく、音楽をこの上なく追究する姿勢。初心に立ち返りながらも、永遠に進化することをやめない彼らの背中は、日ごとに大きくなっているのだと感じた。 MCではSHUNTOが中心となり、UVERworldの音楽との出会いやエピソードが語られた。「UVERworldというバンドに人生救われたと思ってるし、当時のことを思い出すといろんな感情が込み上げてきたりするんだよね」と切り出し、努力を知らない大人たちにダンスや歌を否定された日のこと、将来を気にかける父親が夢を諦めた方がいいのではと悩んでいたことなど、ここに至るまでの苦しい日々を振り返った。 しかしUVERworldの言葉を借り「どこのどいつが俺たちの未来に絶望を感じていたとしても、俺たち自身が俺たち自身に絶望を感じることはない! それが俺たちの『在るべき形』!」と声を荒げ、そのままSHUNTOが先陣を切ってUVERworldの「在るべき形」をカバー。SOTAやMANATO、メンバーが笑顔で見守る姿を、カメラが抜いていく。カバーパフォーマンスだということを忘れてしまうくらい、歌詞に込められた想いがしっかりと伝わってくる。それはSHUNTOだけでなく、メンバーそれぞれが「在るべき形」と近い経験を持ち、深い共感を抱いているからだろう。最後にはSHUNTOを中心に、全員が肩を組んで熱唱。全員で心を束ね、音楽を作り上げていることをここでも実感できた。 ライブはいよいよ終盤戦。LEOが再びUVERworldやcrew、BESTYへ感謝の気持ちを伝え、「いろんな人にお前らは失敗作だって言われてきたけど、そんな失敗作が今日、全力で肯定して見せます!」と思いの丈を叫んだ。「Great Mistakes」では、ステージの端と端で目線を交わし合うJUNONとMANATO、SHUNTOの姿や、肩を組みながら互いに鼓舞しあって歌い上げるSOTA、RYOKI、観客とともにその瞬間を胸に刻もうとタオルを回しまくるLEO、RYUHEIなど、各々のやり方でその時間を謳歌する。今この瞬間に、ここに集っている全員が「音楽」と「生」を実感していたことだろう。 BE:FIRSTが最後に歌い上げたのは、別れの切なさを明るく歌い上げた「Bye-Good-Bye」。お馴染みの軽快なポップチューンに加え、バンドを使ったロックテイストのアレンジも加わり、表情豊かなサウンドが会場を包み込んでゆく。RYOKI、SOTAはそれぞれのソロパートでソロダンスを披露し、サビでは安定のハイトーンボイスをJUNONが見せつける。後ろで踊るメンバーも、顔を見合わせながら自然と笑みをこぼし、幸福な空間が広がってゆく。 すべてのライブが終わり、最後にはUVERworldの面々も再びステージへ集結。お互いの健闘を讃えあい、全員で写真を撮影したあとは、「Mainstream」の〈Zoom Zoom Zoom〉ダンスをしつつコミカルに退場。最後にステージを後にしたSHUNTOの背中は、実に充実感に溢れていた。 もし筆者があの時間を一言で言い表すとするならば、「音楽と人生への愛を叫んだ日」だ。ライブを鑑賞した後、「これで明日も生きられるわ」と口にする人をよく見かける。しかしこの日私たちが観たものは、生きる糧以上に生きる意味を、そして生きる意志を与えてくれる喜びだった。 UVERworldとBE:FIRST、世代も表現も異なるアーティストが、お互いの音楽をリスペクトし合いながら身体全体を使って音楽を作り上げたこの日。彼らが教えてくれた、ただひたすらに音楽を楽しみ続けた先にある幸福感と躍動感、未来への希望を、きっと私たちはこの先も忘れることができないだろう。
神田佳恵