日本舞踊の若柳佑輝子が自主公演で松本隆作詞「儚小町」披露 乙女心と芯の強さをかれんに
京都を本拠にする日本舞踊五大流派のひとつ、若柳流。その四世家元、若柳壽延の長女で気鋭の舞踊家、若柳佑輝子が、初の自主公演「佑輝子の會」を28日午後6時半、京都市上京区の金剛能楽堂で開く。眼目は、歌謡曲の作詞家として知られる松本隆が佑輝子のために作詞した新作「儚小町（はかなこまち）」を披露すること。「日本舞踊をもっと広く知っていただきたい」と、新たな試みに挑む。 佑輝子は幼い頃から父、壽延の薫陶を受け、東京の中村流八代目家元、中村梅彌にも師事。気品と華を併せ持つ舞踊家で、近年は京都生まれ、京都育ちの女性舞踊家4人でユニット「京躍花（きょうようか）」を結成。小中学校で日本舞踊を教えるなど日本舞踊の普及推進にも努めている。 今回の自主公演は、「コロナ禍で活動が制限された際、これまで父の大きな庇護のもとで活動してきたことに気付いた。今後は自分の足で踏み出していきたい」と決意。大好きな古典の曲「静と知盛」とともに、「日本舞踊を初めて見てくださる方にも興味を持っていただけて、より多くの方に共感していただける作品を」と、新作も上演することにしたという。 新作「儚小町」は松田聖子の楽曲などで知られる松本が作詞を担当、横笛奏者の藤舎貴生（とうしゃ・きしょう）が作曲し、佑輝子自身が振り付けを担う。絶世の美女とうたわれた平安時代の歌人、小野小町の若き日を描いた作品という。 松本は「小町というと、能ではほとんど老女になってからの物語が描かれているが、それでは本人は悲しいだろうと思って、若い美しい小町に焦点を当て、いま、かれんに咲いているイメージを描いて作詞した。佑輝子さんが踊り出すと、絵が動いているような感じに思えるのではないか」と期待する。 佑輝子も「松本先生の詞にはかわいい乙女心が描かれていて、そこに小町の芯の強さを表現できる振りをつけて踊りたい」と話す。 一方、「静と知盛」は、前半、恋しい源義経と別れなければならない静御前の思いが、後半は打って変わって義経に復讐しようとする平家の武将、平知盛の凄絶な姿が描かれる。 「男と女の踊り分けが難しい曲。ただ、静の舞の中に京の四季の名所をつづった『都名所』があります。京都で生まれ育った私だから踊ることができると信じて勤めたいと思います」
ほかに「雛鶴三番叟（ひなづるさんばそう）」（花柳寿々彦、藤間直三、若柳智規）。若柳オフィス（075-252-7717）。（亀岡典子）
