「石破外交に対する間違った見方を正しましょう」飯島勲・内閣参与が明かす外交現場でいま本当に起こっていること
誤解されている石破政権の外交手腕
石破茂政権が誕生して3ヵ月が経ちましたが、この短い期間にアメリカではトランプ氏が大統領選挙で勝利し、韓国では大統領の弾劾訴追案が可決され、シリアではアサド政権が崩壊し……と、世界の歴史が動くほどの大きな出来事が立て続けに起こりました。発足早々から石破政権はいくつもの難局に直面したわけですが、官邸と外務省がしっかり連携してうまく対応しています。 【写真】文在寅の「引退後の姿」がヤバすぎる…衝撃ショットを見る! しかし、石破政権の外交手腕についてなかなか国民の皆様には伝わっておらず、私は幾分もどかしく感じています。 小泉純一郎元総理の秘書官を務め、内政はもちろん、北朝鮮との交渉など外交方面でも手腕を発揮した飯島勲氏(79歳)。安倍内閣・菅内閣・岸田内閣に続き、石破内閣でも内閣官房参与に就任し、APECやG20などの重要な国際会議にも同行した飯島氏が、新聞やテレビ報道では伝わらない石破外交の内実についてすべてを明かした。 石破総理に対する厳しい批判は、特にネット上で飛び交っていますね。 「外交の場での石破さんの振る舞いがなっていない」 「石破さんはずいぶんのんびりしているようにみえるが、ああいった態度で各国の首脳と蜜月関係が築けるのか」 といったような意見を、よく目にします。 皆さんの不安や不満もわかります。外交で大きな成果を挙げて、国益につなげてほしいという期待があるからこそ、総理の振る舞いを厳しい目で見てしまうのでしょう。しかし、外交は会議や表舞台での言動だけを見て、その成否を判断できるような簡単なものではありません。むしろ、水面下で行われるさまざまなやりとりや各国の思惑を鑑みなければ、正しい評価は下せないものです。
岸田政権から引き継いだ財産
たとえば昨年11月、石破総理はリマでのAPEC首脳会議およびG20リオデジャネイロ・サミットに出席するため、ペルーとブラジルを訪問しました。 この会議の様子がテレビなどで報じられたとき、「座ったままで各国の要人に挨拶するとは何事だ」「大事な会議の場でスマホをいじるなんて」といった批判が上がりました。こうした表面的な事象を見て、 「この外遊は失敗に終わったんだろう。やっぱり石破さんは外交オンチなんじゃないか」 と思われた方もいるでしょうが、ご安心下さい。それはまったく的外れです。 実はこのAPECとG20で、石破総理は1週間という短期間に日韓首脳会談、日中首脳会談をはじめ、日・ブラジル首脳会談、日英首脳会談、それからベトナム、インドネシア、マレーシアの首脳陣らとの会談や会議を立て続けに行っています。 この短期間で各国首脳との関係を築けたのは大きな外交成果ですが、首脳との会談となれば、その調整には大変な労力がかかります。難航することもざらにあるのにすべて滞りなく実行できたのは、岸田政権から外交方針や官僚などの人的引き継ぎがスムーズに行われていたからです。人脈や知見が続いているからこそ、石破政権下でも各国との外交連絡が安定的に進み、次々と首脳会談をこなすことができた。 言葉で言うのは簡単ですが、政権間の継続性を保つのは案外難しい。それが、APECとG20を通じて、石破政権が岸田政権の外交資産をしっかり引き継いでいることをアピールできました。各国の外交関係者からも「日本とは引き続き安定した外交関係を維持できる」と安堵の声が聞こえてきます。 このように、外交というのは表面的な出来事を見るだけでは評価できないもの。一方で、その内実は伝わりにくいところがあります。そこで今回はこの場を借りて、総理の外交手腕を正しく知ってもらうためにその内実についてお話ししましょう。 まず、私は石破総理の外交手腕をとても高く評価しています。その一番の理由は、自由民主党の総裁選に立候補したときに「自分が総裁になったら、平壌に日朝の連絡事務所を設置する」と発言したことです。正直、あれには驚きました。 私は小泉内閣のときに日朝外交に携わった経験から、日朝の関係改善をライフワークとしてきました。ですから、総裁選では各候補が日朝関係についてどんな発言をするのかに注目をしていましたが、最も踏み込んでいたのが石破さんでした。 連絡事務所の設置について「単なる思い付きで言ったのだろう」という声もありましたが、私は石破さんが、昨年9月の総裁選の時点でトランプ氏の再選まで見越していたのではないかとみています。というのも、トランプ氏は「再選されたら金正恩総書記と会う」と公言していましたから。 トランプ氏は優れたビジネスマンです。米朝関係を修復することで、北朝鮮に眠っている一千兆円規模ともいわれる地下資源を狙っているといわれています。その真意はともかく、トランプ再選後は米朝関係が改善すると期待されています。そのとき、日本が北朝鮮に対して敵対的な姿勢を示しているだけでは、何の外交利益も得られません。むしろ、米朝関係に連動して日朝関係が前進するチャンスとなります。そのことを見越して石破総理は「日本も平壌に連絡所を設置し、関係改善を進めるんだ」と表明した。この外交観は大したものです。 後編記事『国民は総理の外交手腕を見誤ってはいないか…飯島勲・内閣参与が明かす「私が石破総理と喫煙所で会って話したことのすべて」』へ続く。 「週刊現代」2025年1月11・18日号より
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