第93回選抜高校野球 指導法、個性に合わせ 東播磨・福村順一監督 /兵庫
<センバツ2021> 東播磨を率いる福村順一監督(48)は、前任校の加古川北時代を含め3度目の甲子園に臨む。大半が高校に入ってから硬球に触れた選手らと向き合い、一人一人の個性に合わせ、細やかに指導する。長男が東播磨野球部に在籍した頃は、「監督であり父親」という立場も経験した。関係者の言葉から、監督の人物像に迫った。 福村監督は、東播磨OB。高校時代は内野手兼投手で、主将も務めた。天理大では、3年生でリーグのベストナインに選ばれている。保健体育科講師として初めて赴任したのも東播磨。加古川北監督時代は、2008年夏の甲子園、11年のセンバツに出場。センバツでは8強に進出した。 ◇2人の「恩師」 福村監督が「この人たちに出会わなければ、いまの自分はない」という2人の「恩師」がいる。1人は、新人講師時代の東播磨監督、藤井智司さん(故人)だ。「生徒との距離の詰め方がうまかった」(福村監督)といい、選手の個性に合わせて声を掛ける藤井流を自らも踏襲している。 もう1人は、神港学園(神戸市)総監督の森脇忠之さん(63)。社の監督時代、福村監督が副部長・部長として師事した。「ノックが生徒を上達させる。ノックで超一流になれ」が、森脇さんの教え。福村監督は、時間を見つけてはノック練習に打ち込んだ。「それでも、森脇先生のノックを受けたがっていることが選手らから伝わってきた」と福村監督。練習メニューの組み立てで、ダメ出しを受けることが多く、「先生と生徒の力になれない自分に潰れそうだった」と振り返る。 東播磨は3月10日、練習試合で神港学園と対戦した。東播磨の戦力について、森脇さんは「攻守ともに粘っこいね。(福村監督は)勝負に対する執念や指導方法が幅広くなった」と評価する。 「指導のノウハウを学びたい」という後進も多い。東播磨の松本直樹副部長(38)もその一人。最初に見学に訪れたのが13年でその後、異動がかなった。いまは監督の一番近くで野球理論を学ぶ。神港学園の本岡諒也コーチ(26)は、加古川北時代の教え子。監督の姿を見て、指導者の道を選んだ。「熱血漢で、厳しくも優しい。大切に育てていただいたご恩を今度は、神港学園の生徒たちに注ぎたい」と語る。 ◇家では優しい父 「家では野球の話をしない」「学校では敬語を使う」――。監督の長男悠渡さん(20)は高校時代、父とこう約束した。父の下で野球部員だったからだ。「選手たちが本当に楽しそうで、監督がここまで徹底して取り組むチームは他にない」と、東播磨を選んだ。入学当初は、技量が伴わず「監督の息子なのになぜ」という声も聞こえてきたが、最後はエースの座をつかんだ。「高校で成長できたから、大学でも野球を続けられている」 やはり、クラブチームで野球をしている次男泰輝さん(13)は「家にいる時は、ふんわりしていて本当に優しい」。グラウンドに立つ姿とはまた違い、オフ時のリラックスした表情が伝わってくる。【後藤奈緒】 〔播磨・姫路版〕