文献調査「立地自治体の責務」 原発の町、廃炉で衰退も懸念 佐賀・玄海町
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、佐賀県玄海町議会は「文献調査」の応募を求める請願を採択した。 九州電力玄海原発が立地する同町では、「核のごみの原因を有する自治体として文献調査に応じるべきだ」との意見が目立つ。これに加え、廃炉に伴う町の衰退への懸念も請願の要因となった。 請願を出したのは三つの地元商工団体。旅館組合は「原子力立地自治体の責務に基づき、国に協力する」と強調。飲食業組合も「原発と共生し恩恵を受けていることから、処分場選定問題の解決に向けて協力を惜しむべきではない」とした。 文献調査に応じると、国から最大20億円が交付される。調査を受け入れた北海道寿都町、神恵内村は財政難に悩むが、玄海町の今年度当初予算約100億円のうち6割を原発関連収入が占める。当面、財政は盤石で、商工団体や賛成派町議は「交付金目当てではない」と口をそろえる。 「原発が動く限り核のごみも増え続けるが、止めるわけにもいかない。処分地が決まらぬ現状を前進させることが必要だ」。町議の一人は、停滞する議論に一石を投じる考えを示す。 一方で、請願の背景には、廃炉への危機感もある。原発4基のうち1、2号機は廃炉が決定。これに伴い、定期検査などで町を訪れる作業員は減少した。飲食業組合は「大幅に売り上げが落ち込んでいる」と指摘。3、4号機の将来の廃炉にも「現実問題として向かい合う必要がある」とし、「処分場は新たな産業振興策の選択肢の一つ」と位置付ける。 脇山伸太郎町長が5月に示す判断は、同様の事情を抱える他の原発立地自治体にも影響を与える可能性がある。