進化する文房具(10月21日)
幼い頃からの手元のパートナー、生活の一部とも言える。文房具には日本で改良され、進化した逸品がある▼パイロットコーポレーションは約20年前、書いた文字をゴムでこすって消せるボールペンを開発した。ボールペンで勉強する習慣がある欧州の子どもには、うってつけ。日本旅行の土産として長く人気を集めている。ぺんてるの水性サインペンは、宇宙飛行士に重宝された。毛細管現象によってインクをペン先の芯に吸い上げ、無重力でも使用できる。1960年代の米有人飛行計画で飛行船内に持ち込まれた▼メーカーは今、文具女子と呼ばれる存在に熱視線を送る。使いやすさ、美しさを評価し、交流サイト(SNS)を通して新たなブームを生み出している。その日の気分に合わせて筆記具を選ぶ。大事な商談では雑音を立てぬよう、音が出るノック式ペンを避ける徹底ぶりだ。福島市の中心市街地に6月、新装オープンした文房具店にも、好まれそうな商品が並ぶ▼デジタル化が急速に進む昨今、アナログの日用品が魅力を放つのはなぜだろう。手のひらでずっと温め、思いを書き留めてきた「誼[よしみ]」がきっとあるから。どんな消しゴムでも消せはしまい。<2024・10・21>