「これほど増えるとは」移住者が2年前の5倍以上に 若い世代を引きつけた長野県木曽町、でも家が足りない
長野県木曽町に2023年度中に移住した人は73人で、前年度を28人上回った。町が移住施策に力を入れ始める前の21年度(14人)と比べると5倍余りに急増。移住を検討している人が町内での暮らしを想像できるように行った情報発信などが功を奏している。一方で、さらなる移住者の受け入れに向け、住居の確保が課題となっている。 【グラフ】急増した長野県木曽町の移住者数
町や町移住サポートセンターに相談したり、支援を受けたりして移住した人は18年度に12人だったが、町が移住促進策を本格化させた22年度から急増。23年度までの2年間で118人が町内に移り住んだ。23年度の移住者は20代が15人で最多。30代が14人、10代までが13人と続いており、若い世代が多いのが特徴だ。
町は22年度、町民課に移住定住係を新設。若い世代の利用が見込まれる民間の複数の移住ポータルサイトで町の特徴や魅力の発信も始めた。また、大都市圏の移住窓口の担当者を町に招待。認定こども園での保育や自然環境を見てもらい、担当者から移住希望者に子育て環境などを具体的に紹介してもらえるようにした。23年度からは町の地域おこし協力隊員や職員が、情報発信サイトで町内に暮らす人や祭り、移住に関する情報を伝えている。
こうした取り組みに加え、宿場町の風情が感じられる町並みや美しい景観、自然と触れ合う保育環境や高校卒業までの医療費無料化など町が従来から行ってきた施策が評価され、移住者を引きつけたとみられる。町民課の担当者は「子育て世代を対象に移住施策を進めたが、これほど増えるとは思わなかった」と喜ぶ。
受け入れ拡大に向けた今後の課題は住居の確保だ。同課によると、移住者が増えたことで町営住宅の空きは残り数軒。空き家バンクの登録件数は22軒で、うち6軒は既に交渉中だ。賃貸の空き家も需要がある他、起業を予定する移住者向けに空き店舗の用意も必要という。
同課の担当者は「元々住んでいた人の思いが詰まった家を(荒れないよう)残していきたい思いもある」とし、空き家所有者に書面で空き家バンクへの登録を呼びかけていくという。