なぜエンジンがこんなところに!? ロイヤルエンフィールドが再現した、120年前のバイクがカッコイイ!
エンジンの始動も停止も一苦労、それでも先人の知恵には感動!
ゴードン氏によれば、プロトモデルのレプリカを完成させた過程で、当時の貴重な技術や、モーターサイクルへの考え方について、次々と発見があったそうだ。まず、目を惹くのはエンジンの搭載位置だ。 エンジンは前輪上部のステアリング・ヘッドに固定され、そこから革のベルトを介して後輪を駆動させる仕組みとなっている。エンジンの始動方法もユニークで、エンジン上部にあるシリンダーの中に、直接スポイトでガソリンを垂らし、小さな爆発を起こしてエンジンを温める。その後、ペダルを漕ぐことでエンジンが始動する。冷えた状態ではエンジンがかかりにくいため、その場合は配気管の熱でキャブレターをあたため、始動しやすくするそうだ。ちなみに、エンジンを始動させずに人力のみで走ろうとしても、車体が重すぎるため、モペットのような乗り方はできない。 エンジン始動後はガソリンタンク右脇のハンドレバー操作でキャブレターを開ける。すると、車両は勝手に最高速まで加速する。スロットルは存在せず、右ハンドルレバーでバルブリフターを調節することでシリンダー内の負圧をなくし、“加速させない”操作ができる。スロットルで加速させるのではなく、全開状態から出力を抑え込みながら走る、という乗り方が何ともユニークだ。 停止はどうするのかというと、まず、タンク脇のレバーでキャブレターを閉じ、右ハンドルレバーで排気バルブを開く。さらに左ハンドルレバーで前輪ブレーキと、ペダルを逆に漕いで後輪ブレーキをかけることで、ようやく停止できる。これだけの操作が必要だと、ピタッと停まるのは大変では? とゴードン氏に質問すると、「この時代は道路も整備されていないし、信号機もないから急ブレーキは必要ないよ」と、ごもっともな指摘を受けてしまった。たしかに、120年前はガソリンスタンドも存在しない時代なのだ。ちなみに、燃料はどのように確保していたかというと、薬局で「ベンジン(原油から分留精製した揮発性の高い可燃性の液体)」を調達していたそうだ。 120年の時を超えて現代に甦った、ロイヤルエンフィールド初のモーターサイクルは、先人の知恵と技術が詰め込まれた素晴らしい一台だった。この他にも、一枚の真鍮板から作ったという折りたたみ式の真鍮タンクや、ジッポライターのように使うライトなど、各パーツの解説もギャラリーページに用意したので、そちらもぜひ楽しんでいただきたい。
文=KURU KURA編集部
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