エア式に比べ電気代最大80%削減 「液体入り固形物」を傷つけず搬送 グラコ
グラコの創始は1926年、米国ミネソタ州ミネアポリスにおいてグレイ兄弟が「自動車用グリースガン」を発明し、グレイ社(後にグラコに社名変更)を設立。このガンに使用するポンプを、ガソリンなど揮発性原料を扱うため、安全面から電気を使用しない“エア式”に改良し、販売を開始したのが始まりである。 以来、各種ポンプ、自動車市場の塗料循環システム、スプレーガンなど、世界最高レベルの流体ハンドリング機器を製造。米国はもちろん、日本、中国、オーストラリア、韓国、欧州、インド、ロシアなどでグローバルに展開。その日本法人が同社の前身である日本グレイだ。68年に設立し、93年に現社名に変更し今日に至っている。 その代表的な事業は次の3分野である。◆産業機器=プロセス、サニタリー、仕上げ塗装、シーラント塗布、FRPおよびCDRP(炭素繊維)、発泡ウレタン塗布などの機器の設計・販売◆潤滑用機器=ポンプ、計量器、ホースリール、制御装置、集中潤滑製品などをラインナップ◆建築・建設用機器=塗料、建築用塗装材、テクスチャー材料の塗布に使用するスプレーヤーおよび高圧洗浄機の販売。 以上を踏まえ、特に食品業界に対しては、ニーズの高い“食材移送”向けとして、ダイアフラムポンプやピストンポンプを主力とする「SaniForce(サニフォース)」シリーズなどを中心に積極的な製品提案を行っている。その一環として注目されるのが、22年~23年にかけて全モデルの販売を開始した次の製品である。同社は24年度の主力製品として、積極的な販売攻勢をかけていく。
【QUANTM(クオンタム) 新電動ダイアフラムポンプ(サニタリータイプ)】
当初、食品業界ではエア駆動式のダイアフラムポンプはあり得なかった。それはエア駆動なので必ず「排気」をしなければならない。その排気が食品の製造ラインにかかったら不衛生である。それが大きな理由で、エア駆動式は導入されなかった。 そこで同社は、「イニシャルコストが安い」「構造が簡単」「現場で直せる(ダウンタイムが減らせる)」メリットを強調。さらにエアホースを10m、20m先まで延ばし、そこでエアを排気できるようにするなど改良を加え、食品業界にニーズを広げた。 その後、時代のトレンドが変わり、まず移送する液体に固形分を混ぜたものが増えた。当初はまず液体を送り、それから別に固形分を送って混練する“二度手間”を行っていた。そこで混練したものを同時に移送したいということになった。食品でいうと、例えばフルーツソースに果肉を入れたものを移送するということである。ジュースも最近はパルプ入りといったものがある。 ただ、従来のスクリュータイプの押し出し式モノポンプでは混錬した固形物が摩擦でつぶれてしまい、本来の食感が損なわれてしまう。そこで開発したのが同ポンプだ。また、同社独自のノウハウで開発した「フラッパー弁」タイプもラインナップに加え、極限まで食材を傷つけない移送に対応した。 また、電動ポンプはなぜこれまでサニタリーに投入できなかったか。その理由は電動ポンプの構造に大きな理由があった。例えば、電動ポンプはサーボモーターで動くが、この従来のタイプでは移送物が詰まった場合などに検知できなかった。そのため、モーターはどんどん出力を上げ、無理に移送物を押し出そうとする。その結果、モーターが破損してしまう。 これに対し、同ポンプは、モーター部に圧力センサーを装備。材料移送中の圧力をモーター制御部に随時フィードバックする “クローズドループ制御”を行い、従来の電動ポンプでは不可能であった締切運転が可能になり、多くの自動搬送システムに対応が可能になる。