あれ、年金がいつもより少ない…「年金月約7万円」の70代母、郵便局の通帳記帳で見つけた「年金減額の事実」。年金事務所へ駆け込むと【CFPが解説】
老後の生活を支える公的年金。多くの人が金融機関または、ゆうちょ銀行での振り込みによる受け取りを利用していますが、きちんと記帳して確認をしているでしょうか。もしかしたら「年金が減らされている」なんてことも……。本記事ではAさんの事例とともに、年金額の変動理由について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
年金額が毎年変わる?
65歳を過ぎると受け取ることのできる年金。 去年と比べて年金額が変わっている……そんな経験はありませんか? 年金額を月換算すると約7万円受給している70代のAさん(女性)もそう感じたひとりでした。Aさんは毎年、国民年金の「老齢基礎年金」を受給しています。 数年前の話のある年のことです。いつものとおり、年金の振り込み日に必要な分だけお金を引き出そうと郵便局に向かいました。通帳の記帳をした際、Aさんはあることに気が付きます。 「あら、去年と比べて年金額が減っているわ。今回だけ少ないのかしら?」 しかし、その年は減った年金額がもとに戻ることはありませんでした。少額の差だったため、おおらかな性格のAさんは、あまり気にせずにいました。そんなことは忘れかけていた、1年後。 「今年の年金は昨年と比べると増えているわ。なにか理由があるのかしら?」 Aさんはある日孫を連れて遊びに来た娘へ「そういえば」と相談をしてみました。娘は答えがわかりません。「年金が生活の基盤なのに、そんな大事なこと、どうして黙っていたのよ!」と母を責め立て、慌てて年金事務所へ相談に行くことに。
年金額が決まる要因
年金事務所職員からは、年金の増減について、以下のような説明があったそうです。 年金制度は2階建となっており、老齢厚生年金と老齢基礎年金にわけることができます。老齢厚生年金は一般的にサラリーマンの方が加入でき、加入期間とそのあいだの給与の額によって年金額が変わります。 一方、老齢基礎年金額は加入期間によって年金額が決定されますが、その後の物価変動率や世の中の賃金変動率に応じて、年金額の改定を毎年行う仕組みとなっています。 物価変動率とは世の中のモノの値段の変動率を指し、世の中の賃金変動率とは名目手取り賃金変動率のことを指します。この名目手取り賃金変動率とは賃金の変動率を表す指標です。 つまり、世の中のモノの値段と賃金のバランスによって毎年の年金額が計算されるため、毎年変動が起こるというわけです。 老齢基礎年金額の過去の推移は下記のとおりです。 令和6年度 81万6,000円(月額6万8,000円) 令和5年度 79万5,000円(月額6万6,250円) 令和4年度 77万7,800円(月額6万4,816円) 令和3年度 78万900円(月額6万5,075円) 令和2年度 78万1,700円(月額6万5,141円) 令和元年度 78万100円(月額6万5,008円) 平成30年度 77万9,300円(月額6万4,941円) 平成29年度 77万9,300円(月額6万4,941円) 平成28年度 78万100円(月額6万5,008円) 平成27年度 78万100円(月額6万5,008円) ※過去の年金額をもとに筆者が作成 前年と比べてほとんど変動しない年もあれば、1ヵ月あたり2,000円ほど変動した年もあることがわかります。特にここ数年の増額幅は顕著なものとなっています。 また、68歳以下の人を「新規裁定者」、69歳以上の人を「既裁定者」と呼び、年金の計算方法が違うことで額が異なる場合があります。上記は68歳以下の「新規裁定者」の人で年金額をまとめました。