英国で「イラク戦争は誤り」報告書 日本での総括はどうなっている?
イラク戦争に参加した判断には誤りがあった――。英国の調査委員会が、自国の参戦について出した結論が、日本でも注目されました。イラク戦争をめぐっては、開戦当事者の米国でもその判断が批判にさらされています。翻って、日本ではどうでしょうか。元外交官の美根慶樹氏に、日本でのイラク戦争の総括について寄稿してもらいました。 【写真】イスラム国で揺らぐ「国家」 近代史を否定する「現代性」
ブッシュ元大統領も攻撃決断に「責任ある」
2003年のイラク戦争への参加に関する英国の独立調査委員会(チルコット委員会)の報告書が7月6日に公表されました。非常に興味深い内容です。日本もイラク戦争の際、自衛隊を派遣しました。そのことについて賛否両論がありましたが、その検証はまだ行われていません。英国の調査報告が発表されたのを機会に、我が国における検証の在り方について振り返って考えてみたいと思います。 イラク戦争について反省の言葉が最初に出てきたのは、戦争遂行の中心であった米国からでした。ブッシュ大統領は2005年12月、ワシントン市内で演説し、「イラクの大量破壊兵器に関する情報機関の分析は、多くが誤りであることが判明した。大統領として、イラク攻撃を決断した責任がある」と述べました(時事通信12月14日)。
米議会上院の情報特別委員会はブッシュ大統領の発言より先の2004年7月、イラクの大量破壊兵器について、「米中央情報局(CIA)が多くの過ちを犯し、誇張して伝えた。米大統領や議会が開戦にあたって判断材料とした情報には欠陥があった」と厳しく指摘していました。 英国でも米国と並行して、英国が参戦したのは誤りだったのではないかという議論が起こっていました。かなり時間が経過してからのことですが、ブレア元英国首相は2015年10月、米国のCNNとのインタビューで、「我々が入手した情報が間違っていたという事実については謝罪する」と述べました。 今回発表された独立調査委員会の報告は、「イラクに対しては査察も外交的努力もまだ継続されていた。英国は安保理の承認なしに戦争に踏み切った。最後の手段として戦争に訴えざるを得ない状況には立ち至っていなかった」との趣旨を述べ、情報に欠陥があったことだけでなく、戦争をしたことをも明確に批判しました。