『ダンジョン飯』は飯テロアニメとして文句なし! 映像化を成功に導いたTRIGGERの手腕
2024年も期待の新作が目白押しのテレビアニメ。その中でも注目の一作が、1月より全26話で放送スタート、現在全国劇場にて第1話~第3話が12月28日まで先行上映中の『ダンジョン飯』だ。 【写真】同じく飯テロアニメとして人気となった『とんでもスキルで異世界放浪メシ』 原作は2014年にスタートして今年9月に完結した九井諒子作のファンタジー&グルメコミックで、これまでに様々なマンガ賞も受賞。ダンジョンの深い階層でドラゴンに食べられてしまった仲間を一刻も早く救うため、食料は倒した魔物を料理する自給自足でまかないながらダンジョンを突き進む主人公・ライオスと仲間たちの冒険と、ユニークだけど美味しそうな魔物料理の数々を描いたシリーズ累計部数1000万部超の人気作だ。 先行上映から見えてくるTVアニメ『ダンジョン飯』の魅力は、何といっても巧みな描写や演出によって描かれる「魔物料理」へと至るプロセスとストーリーだ。普通のファンタジー作品やRPGならモンスター(本作では「魔物」)は倒すべき敵に過ぎないが、この作品では「料理の食材」でもある。それを際だたせるように「大型のドラゴンは消化もゆっくりなので、急げば食べられてしまった仲間を助けられる」「大サソリは目の前に棒などを出すとハサミで掴んでくるので簡単に捕まえられる」など、登場する魔物の生態や特色がしっかり描写されていて、食べることのできる「生物」としてのリアリティが与えられているのだ。 ニワトリの身体と蛇の尻尾を持つバジリスクに対しては身体を大きく見せながら吠えて威嚇したり、粘液の塊みたいなイメージのスライムにも存在する内臓を突いて倒したりなど、魔物の生態に応じた戦い方が繰り広げられる戦闘シーンも面白い。特に先行上映版のクライマックスとなる「動く鎧」との戦いは、その意外な正体と知恵を絞っての攻略法など見所満載だ。 そして本作最大の見せ場となるのは、魔物料理の調理シーンだ。調理用具を巧みに使いながら倒した魔物を料理へと仕上げていくプロセスを、アニメならではの丁寧な動きの流れで「下拵え」「味付け」「調理」と料理番組ばりにしっかりと見せていく。それがライオスたちが「美味い」と平らげる魔物料理の「美味しさ」の説得力に繋がっているのだ。さらに料理の完成ビジュアルは、人気フードイラストレーター・もみじ真魚が担当。実際に食べてみたくなる美味しそう感がハンパない仕上がりなので、TV放送が始まったら毎回飯テロになること間違いなしだ。 そんな食事シーンや戦闘シーン、そしてダンジョンを攻略していくライオスたちの日常描写などを活き活きと描きだすのが、TRIGGERのクオリティの高いアニメーション。闊達でノリの良いアクションに定評のあるTRIGGERのアニメーションだが、本作では食事シーンの丁寧な動きや、キャラクターの感情の機微を感じる表情やリアクションなど、これまで手がけてきた作品とは異なる魅力を生み出している。 そしてキャラ同士での掛け合いのシーンなどでは、そこに絡んでない他のキャラの行動などもキチンと描かれ、それが「ダンジョンを探索して生計を立てている」冒険者たちのいる世界のリアリティを産み出しているのだ。キャラクターに注目すると、なかなか魔物料理に馴染めないヒロイン・マルシルが見せるかわいくも笑えるリアクションの数々にも注目だ。今冬の『葬送のフリーレン』に続いて、またもや美少女エルフのヒロインがアニメファンを虜にするかも? 原作は先日コミックスの最終刊が発売されて全14巻で完結。原作ファンはそれぞれのキャラクターが背負った背景の数々もわかった上でアニメを観る事になるが、その点も心配無用。今回の先行上映版は原作スタート時のエピソードがベースだが、ライオスのサイコパス気味なモンスターへの執着やマルシルのエルフらしからぬ一面など、キャラクター描写が原作が進むにつれて露わになっていった要素も踏まえたものになっている。すでに原作を読んでいる人なら、そういうこだわりの部分も楽しめるはずだ。 「狂乱の魔術師によって地下に封じられた黄金の国」へと繋がるダンジョンの謎という壮大なファンタジーと、「仲間」や「食べること」の大切さへのこだわりという日常が対等に描かれていく唯一無二のグルメファンタジーアニメ『ダンジョン飯』。ぜひTV放送前に、劇場の大スクリーンとリッチな音響でこの世界を楽しんでほしい。
石黒直樹