シニア世代の社会再参加「人生二毛作」 地域に根付くか
「子どもカフェ」でお年寄りが勉強相手に
長野県飯田地方のこどもカフェの取り組みでは、食事を家族と一緒に食べる機会が少ない子どもが「しっかり食べること」と「大人の手助けでしっかり勉強すること」の2つのテーマでカフェを開設。教員の経験者のシニアに声をかけて子どもの勉強の相手になってもらい、食材の野菜はほとんど地元の人の提供で賄ったことなどを紹介しました。 このケースでは学習支援に参加したシニアは20人、カフェの受け入れ児童は41人に上り、学習支援では地元の短大の協力もありました。
このほか女性が地域活動に参加するためにシニアが幼児を預かる「子守りボランティア」や、孤独な高齢者たちが立ち寄れる「まちの縁側づくり」なども紹介。かつてお年寄りが寄り合っては茶飲み話を楽しんだ「縁側」の事業では、長野市内の複合商業施設が場所を提供し、3回実施した「縁側」に30~70人も高齢者が集まって好評だったことが紹介されました。 「縁側」の場合は、地元自治体の職員が出向いて血圧を測ったり、健康相談に応じるなど関係機関が連携してお年寄りの生活と健康に目配りする機会としたのが特徴です。場所を提供した商業施設もお年寄り対象のセールスを行うなど協力しました。
今後の運営資金や人材確保に課題
司会を務めた長野県長寿社会開発センターの内山二郎理事長は「こういう事業はとかく公民館でやろうということになるが、商業施設を会場にしようと考えた縁側事業の発想の転換は注目したい」と評価。 ただ、「県のモデル事業として実施してきたが、来年度で補助も終わる。その後どう継続していくかが問われる」(内山理事長)。会場からは「若い人たちに、将来シニアになったときの自分たちの役割や責任があるということを今から心に留め、準備しておいてほしい」という声が出ていました。 内山理事長はなお「後継者づくりが問題になってくるだろう」と今後の人材確保や運営資金などについて厳しい見方。これに対し「学習支援のシニアの皆さんは継続してもらえそうだ。あとは地元の自治体がどう対応してくれるか……」などの意見も出ていましたが、誘導的な県の事業が地域の力と熱意で続けられるのかどうか、現実的な課題として立ちはだかっています。 年金の支給年齢の引き上げなどが将来政治問題化する可能性もあり、シニア世代ができるだけ長く社会参加と就労の機会を持ち続けることが今から迫られています。「人生二毛作」が地域でしっかり根を張ることができるかどうかは、長野県だけの課題ではないようです。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説