運用状況が2年ぶりにプラス収益 GPIFにまつわるよくある誤解とは?
7月7日に年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が発表した「平成28年度業務概況書」(以下、西暦表示)によるとGPIFの運用資産額は144兆9034億円となり、2015度末の135兆9916億円から9兆円程度増加。運用収益率は+5.86%と2015年度の▲3.81%から大幅に改善し、2年ぶりにプラスの収益を確保しました。結果として2016年度は7兆9363億円という巨額の運用収益を獲得し、2015年度の損失(5兆3098億円)を埋めてなお余りある増加を示しました。 以下では、GPIFの運用状況について確認した後、GPIFについてよくある誤解について触れていきたいと思います。
GPIFの運用状況とよくある誤解
まずGPIFの運用資産の配分を確認すると、2016年度末時点では国内債券が31.7%(約48兆円)、国内株式が23.3%(約35兆円)、外国債券が13.0%(約20兆円)、外国株式が23.1%(約35兆円)でした。これは2014年10月に発表された基本ポートフォリオ(国内債券35%±10%、国内株式25%±9%、外国債券15%±4%、外国株式25%±8%)に概ね沿ったもので、それ以前に比べると国内外の株式のウェイトが約2倍になっています(2014年10月以前の国内外株式の資産配分割合は12%)。2016年度の市場環境は国内外の株式が上昇し、国内債券がわずかに下落(金利は上昇)したほか、外国債券も下落(金利は上昇)、為替はほぼ横ばいでしたから、GPIFの運用収益の大部分が国内外の株価上昇によってもたらされたことがわかります(GPIFの運用は市場平均に沿ったパッシブ運用が基本)。資産別の収益率は国内債券が▲0.9%、国内株式が+14.9%、外国債券が▲3.2%、外国株式が+14.2%でした。
このように株価が大きく上下しGPIFの資産が変動した際に、しばしば観察される誤解は「株価変動が年金財源に直結」するといった類のものです。GPIFが管理運用する国民年金、厚生年金保険料の積立金は上述のとおり150兆円と巨額ですが、結論を先取りすると、それは将来の年金財源のごく一部に過ぎませんから、その存在感が過大評価されている印象です。2015年度にGPIFが5兆8千億円(▲3.8%)の損失を計上した際などには「株安で年金崩壊」といった過激な声が聞かれましたが、そうした声の主の中には「GPIFの運用資産が年金財源の全てである」と誤解している人が含まれていたように思えますし、またそうした誤解を招く表現が数多くあったように感じます。