日本の食品ロス…休日フードバンクに参加、ボランティアの若者が感じたこと
難しい箱詰め、食品に「手紙」も添えて
それらを食に困っている人に届けるために箱詰めする作業は、1人2組で行われました。行政などから届く「依頼書」のサンプルを元に、必要な食品をピックアップして、段ボールに詰めていきます。 段ボールには「一箱に入れられるだけ入れる」のが基準。通常は米5キロに缶詰やその他の食品を入れて13キロほどが詰められ、単身で3週間は過ごせる量になるそうです。 しかし、学生の滝さんと、会社員の辻山治樹さん(31)は初めての箱詰めで、目いっぱい詰めたものの、軽い食品を入れすぎたのか全部で5キロ。 「スーパーでアルバイトした経験もあったので何を入れればよいか、それから自分の祖父も想像しながら詰めました。でも、いろいろ考え過ぎちゃったからかな。結構しんどかったです」と滝さんは苦笑いしていました。 また、段ボールには食品だけでなく「手紙」も同封されます。多くの場合、ボランティアスタッフが自発的に手紙を書きます。それに対して、受け取った人の約7割が「返事」を送ってきます。その内容は食に関してだけでなく、「手書きの手紙に助けられた」という感謝の気持ちもつづられているそうです。
「食を通じたセーフティーネットづくり」に
理事長の山内大輔さん(35)は「国内の相対的貧困は2012年度の16.1%から15年は15.6%に減少したものの、生活保護受給率は増加傾向にあり、こどもの貧困も問題視されています。貧困と食品ロスは別問題でありながら、一般の人からは見えにくいという共通点もあります」と指摘した上で、「私たちの役割は食品ロスをなくすことではなく、食を通じて経済的に困っている人々のセーフティーネットを構築すること」と強調しました。 寄付される食品は、小売価格にして2億7,000万円分以上。一方、寄付で一番ありがたいのは白米より長く保管でき、必要に応じて精米できる「玄米」ですが、低温倉庫での保管に年間約50万円、精米代に年間約17万円ものコストが掛かるそうです。現在は助成金と寄付金などで経費をまかなっていますが、決して余裕はありません。 こうした深刻な現実が、若い人を「なんとかしなきゃ」と活動の現場に向かわせているのでしょう。 (吉田尚弘/Newdra) ■吉田尚弘(よしだ・たかひろ)写真家。1991年、愛知県生まれ。海外のスラム街や紛争地取材などをライフワークとして、雑誌への寄稿や講演活動をしている。国内では商業写真も含め、ドキュメンタリータッチの写真が得意。