キルギスタンの丘陵地帯に眠る「核廃棄物」、川から1600万人が暮らす地域に流出も
一見、風光明媚な丘陵地帯だが、ここには膨大な量の核廃棄物が埋まっている。 キルギスタン西部マイリスウ近郊にある、この大量のウランのくず鉱を含む処分場は、状態が不安定であることが調査からわかった。 廃棄物は、中央アジアの肥沃な渓谷を流れる川の水系に近く、またこの地域は地震も多い。処分場が崩壊すれば、チョルノービリ原発級の災害が起こるとの予測もある。「最も危険なのは、反対側(の斜面)からの地滑りだ」と地元の放射線研究施設の技師は話す。 マイリスウ付近の一帯は、1940年代から60年代にかけて旧ソ連が開発した世界最大級のウランくず鉱の処分場だ。処分場には現在約1億8500万ガロン、五輪サイズのプール約280杯分のウラン鉱山廃棄物が溜まっている。 2017年の地滑りで処分場は不安定になった。また新たな地滑りや地震が起きれば、大惨事になりかねない。 処分場が崩壊すれば、汚染された水が川を経由してフェルガナ渓谷に流れ込む可能性がある。キルギス、ウズベキスタン、タジキスタンにまたがるフェルガナ渓谷は約1600万人が暮らし、その多くが様々な作物を栽培している。旧ソ連時代の放射性廃棄物処理施設が行った調査では、災害が発生すれば数百万人が避難を余儀なくされる恐れがあるという。 これらの調査は、欧州委員会と欧州復興開発銀行の支援によるプロジェクトの一環として行われた。その結果、放射性廃棄物は現在ある場所に安全に収容することはできず、川沿いの場所から移動させる必要があることがわかった。 キルギスタン鉱山廃棄物管理当局の担当者はこう語る。「このプロジェクトの枠内で、16カ所の廃棄物処分場が再建される予定だ。うち4カ所は安全な場所に移設されることになっている」 危険とされる処分場2カ所から、川から離れた場所へ廃棄物を移すのに2600万ドル(約40億円)以上の費用がかかる。ただキルギスで果樹園を営む男性は、それがすぐ実現することはないとみている。「私たちにとって最も重要なことは、角の向こうにある処分場を撤去することだ。間違いなく危険だ」と男性は述べた。