『インフィニティニキ』レビュー。オープンワールドとファッションの組み合わせは、フォトモードで真価を発揮する。冒険と探索を多彩な衣装でかわいく彩ろう
突然だが、ファッションゲーム『ニキ』シリーズをご存知だろうか。初代となる『ニキの愛されコーデ』は2012年にリリースされ、おもにモバイル向けゲームとして中国をメインに人気を博すシリーズタイトルだ(決して、「〇〇ニキ」みたいなネットスラングではないよ!)。 【記事の画像(68枚)を見る】 主人公となる女の子“ニキ”と、RPGやアドベンチャー要素を通してファッションを楽しんでいくのは共通の要素。3作目『ミラクルニキ』(現在もサービス中)ではファッションバトルの概念が登場し、コーデの総合点を競うゲームになりひとつの転換期を迎えた。 4作目となる『シャイニングニキ』(現在もサービス中)では、これまで2Dグラフィックだったゲームがフル3Dグラフィックに対応し、より幅広いファッションやカスタマイズ、奥深い物語など楽しめるようになった。5作目にしてひとつの完成形に到達したと言えるだろう。 そんなシリーズ最新作となるのが『インフィニティニキ』だ。ファンである筆者は、意味のわからなさに発表時とても驚いた。 “『ニキ』シリーズ最新作『インフィニティニキ』は、オープンワールドです”。 ……????????????? どういうこと? シリーズファンとしても、ゲームファンとしても意味がわからなかった。 ついに配信が始まる! そんな疑問を持ちながらβ版などの体験を経てようやく理解し、納得し、本作のおもしろさに気づかされた。オープンワールドゲームとしても、ファッションゲームとしても、幅広いプレイヤーが楽しめるゲームになっている。 『インフィニティニキ』は、2024年12月5日に配信がスタート。対応ハードは、プレイステーション5、iOS、Android、PC。スマートフォンなどでも遊べるのがポイントだ。 本記事ではメディア向けの先行体験版のプレイを通して、『インフィニティニキ』がどのようなゲームになっているのかレビューしていこう。 コーデを主軸にしたファンタジーな物語 主人公のニキは、相棒のモモ(昔からニキの相棒としておなじみ)とともにダンスパーティーのドレスを探していたところ、異世界に飛んでしまう。舞台となる“マーベル大陸”に降り立ったニキたちは、世界神・エナに導かれ、不思議な力を持つ衣装“ミラクルセットコーデ”の再現を託されることになる。 主人公・ニキ 相棒のモモ 物語は独立しているのでシリーズ作品の知識をとくに必要せず、本作から初めてもちろん問題ナシ。マーベル大陸って何!? モモって誰なの!? などなど疑問はあるかもしれないが、お決まりの要素だったり、なんか喋る妖精的な存在がいるんだな程度に思っておこう。 マーベル大陸はファッション文化が深く根付いており、特別な力でコーデのデザイン図を作ったりできる人たちが“スタイリスト”という職業に就いている。プレイヤーが操作することになるニキは、異世界から来た謎の有能スタイリストとして活動しつつ、人助けしながらミラクルセットコーデのために世界各地を冒険していく。 オープンワールド“RPG”なので基本はメインクエストを追っていき、クリアーしていけば物語は進んでいく。いろいろな仕様の影響もあり、ゲームプレイ自体はMMORPGをシングルで遊んでいるような感覚で楽しめるだろう。 ほんわかとした空気感だがストーリーはシリアスめで、かなり熱い展開も多い。単なるキャッキャウフフの物語で終わらせないところは、やはり『ニキ』シリーズらしいところ。シリーズ初心者の方々には、メチャクチャに正義感に溢れるニキの姿に驚いてほしい。 オープンワールドの遊びが盛りだくさん! マーベル大陸はとても広大で、大きな街もあれば広大な平原、洞窟やダンジョンなども存在し、プレイヤーはさまざまな場所を探索しながらゲームを進めていく。 フィールドではジャンプや一定の段差をよじ登ったりでき、ピョンピョンとジャンプしながら探索を楽しめる。ときにはギミックを使った大ジャンプなどもでき、立体的なフィールド探索をしながらゲームを進めよう。 探索するとアイテムが入った宝箱が見つかったり、さまざまな要素解放に必要なアイテム“奇想の星”が落ちていることも。“奇想の星”は重要アイテムなので、自身の周囲にある場合は場所のサーチが可能。ただしどうやって取得するのかは方法がさまざまで、基本的には複雑な地形を渡ったり、タイムアタックにチャレンジするなどアスレチック要素になっている。 また、フィールドにも素材アイテムが多数存在する。言ってしまうと全探索要素はファッションアイテムの入手につながっているので、やりがいのある探索を楽しみながら、気づいたらファッションゲームにつながっているのがうれしいところ。 自転車に乗ることもできるが、移動のためというよりはアクティビティのひとつ。 素材自体もマップ画面からサーチできるので、場所さえ見つければ基本探す必要はない。また、ワープポイントがあり、見つけた場所ならばマップ画面からファストトラベルも可能だ。移動がメチャクチャ楽になる方法はあまりないのだが、探索要素が多すぎて「移動で暇だ」みたいな時間はほぼなかった。 一部ストーリー進行や探索では、ダンジョン的な要素もあり、こちらはアスレチックや謎解きが多め。また、本作は敵とのバトルも存在する。行く手を阻む“邪魔モン”を倒しながら、冒険を進めよう。 バトル自体はかなりシンプルで、飛び道具の攻撃を敵に飛ばしたり、ジャンプで攻撃を回避するなど、難しい要素はほとんどない。あくまで探索のアクティビティのひとつ、といった感じにまとまっているので、アクションが苦手な人もご安心を。 スキルコーデを駆使して大冒険! そんなオープンワールドを彩るのが、特殊な力を持つ“スキルコーデ”だ。スキルコーデはおもにメインクエストの進行に必要なもので、それらを作りながらゲームを進行させていく。スキルコーデがあれば、さまざまなアクションがこなせるようになる。 スキルコーデはその名のとおり、コーデ自体がスキルになっている。スキルとしてセットすれば発動できたり、パッシブスキルとして常時発動可能なものもある。 探索で手に入る“奇跡の星”は、おもにスキルコーデの強化や解放に使う。 発動時は、そのスキルコーデに瞬時に着替えるのがポイント。いろいろなスキルを連続発動すれば、さまざまなコーデへ瞬時に着替えながら行動するのはなかなかにユニーク。魔女っ娘系や女児向けアニメというよりも、変身ヒーローのフォームチェンジに近い感じ。 くり出せるアクションとともに、いくつかのスキルコーデを紹介しよう。ちなみにスキルコーデは1アクション1着というわけではなく、同じアクションを持つものでも、別の見た目のコーデも存在する。 浮遊コーデ:気ままな泡沫 初期から持っているスキルコーデで、大ジャンプや浮遊ができる。本作はジャンプアクションが非常に多いため、いちばん見ることになるスキルコーデだろう。 浄化コーデ:浄めの春風 浄化の弾を飛ばし、敵を攻撃できるスキル。ジャンプ中に発動すると、急降下攻撃をくり出せる。浮遊コーデ→浄化コーデといった高速着替えアクションも可能。攻撃だけでなく、探索で離れた場所の仕掛けを作動するといった使いかたも。 ブラッシングコーデ:ふわもこに溺れる 動物をお手入れできるようになるスキルコーデ。近づくと動物を撫でたり、ブラッシングできる。その結果、毛玉などの素材アイテムを入手できる場合がある。警戒心の強い動物もいるため、動物にゆっくりと近づけるアクションも備わっている。 キャッチングコーデ:陽だまりの午後 虫取り網を振って、昆虫を捕まえられる。この世界は昆虫もファッションに紐づくような種類ばかりなので、素材アイテムになる。こちらもお手入れコーデ同様に、警戒心の強い虫を捕まえるため、ゆっくりと近づくアクションがある。 フィッシングコーデ:待ち魚来たる 特定の場所で釣り竿を振って、魚釣りができるコーデ。いわゆる釣りのミニゲームで素材アイテムを入手していく。本作の釣りはそこそこ本格的なものになっていて、魚との駆け引きをアクションで楽しめるようになっている。 リペアリングコーデ:器を満たす伝導 機械の修理ができるスキルコーデで、おもにダンジョンの謎解きに使用する。仕事感満載の上下のツナギも着こなせるのが、本作のファッションの奥深さを感じさせてくれる。 修理もミニゲームになっている。 探索が衣装入手につながる! ミニゲームがいくつか存在しており、アクティビティは盛りだくさん。フィールドでは自転車に乗ることもできるほか、さまざまな遊びを通しながら冒険・探索をしていこう。 まとめると、いろいろな要素を通して、衣装解放や入手、またはコーデ制作に必要な素材を集めて、衣装を手に入れていくのが本作の基本サイクル。スキルコーデはわかりやすい例だが、ゲーム部分にさほど関係ない衣装も多数手に入れることができる。忘れてはならないが、本作はファッションゲームなのである。 フィールドに散らばっている素材は、あらゆるものが衣装につながる。 衣装は髪型からトップス、スカートやズボンなどのボトムス、靴下やアクセサリなど、多数のレイヤーに分けて着せ替え可能。スキルコーデも各パーツに分かれて着せ替えしているものなので、見た目だけの衣装として使用することも可能だ。 基本的な衣装は全身セットになっているため、カスタムコーデが難しいと思う人はセットコーデを選ぶだけでもオーケー。自分好みの組み合わせを見つけるのもいいだろう。また、“衣装進化”をさせると、別カラーの衣装に変更できる。 なお、まるでホビーアニメかのように、ファッションのセンスを競う“コーデアピール”(端的に言えばファッションバトル)がくり広げられており、ファッションの派閥“スタイリスト団”やらなにやらを倒していく要素も存在。ある意味、その装備アイテムとも言えるのだが、基本はシンプルにファッションを楽しむための衣装変更だ。 コワモテだが、コーデアピールでカタを付けようとする怪しい男たち。そういう世界なのです。 物語の中では選択肢も多数存在する。 というわけでコーデアピール。今回は、属性としてクール系コーデを揃えれば高得点が狙えるようだ。 コーデアピールは、テーマにあったコーデを揃えるだけでオーケー。コワモテ男たちが怯むほどのファッションセンスを見せつけよう! といった感じに、コーデアピールでスタイリスト団を打ち負かすような遊びもある。そういう世界なのです! 衣装は製作のほかショップから購入することもできるほか、ガチャで限定的な衣装を手に入れる要素もある。とはいえゲーム攻略部分にはあまり紐づいておらず(ファッションバトル部分のやり込みにはある程度必要だろう)あくまで見た目アイテムに留まっている印象。 リッチなオープンワールドタイトルなのに基本プレイ無料ながらに、課金要素がかなり薄いのは逆に心配するレベル。もちろんやり込んでいけば、「もっとコーデ育成アイテムが欲しい!」、「このドレスがどうしても着てみたい!」と、課金に思わず手が伸びてしまうこともあるだろう。 もちろん物語の展開もプレイのモチベにつながる要素。カットシーンはいずれも見どころ満載だ。 オープンワールドは撮影こそが真骨頂 つまり本作は“衣装変更でアクションをくり出せる、オープンワールドタイトル”である。ここまでは筆者もなんとなく想像通りというか、「まあ鍵となるアイテムが衣装になってるってことだよね」と、そこまで驚くこともなかった。 『ニキ』シリーズがなぜオープンワールドタイトル化したのか考えながらずっとプレイしていたわけだが、フォトモードが解放されたときに「これが最大の魅力であり、本作の狙いか!」と推測でき、そしてその魅力にとても納得した。 フォトモードはフィールドのあらゆる場所で起動することができ、ニキのポーズを変更するなど、さまざまなカスタマイズが可能。フィルターをかけたり、被写界深度をいじるなど、さまざまな調整を加えながら、自分だけの1枚を撮影できる。 つまり本作、オープンワールドの世界すべてが、撮影スポットなのだ。ただ単に美しい風景の中で探索を楽しめるだけでなく、自由度が非常に高い多彩なシチュエーションを作りだせるので、もはや本作のフィールドは撮影用の箱庭とも言えるだろう。 ここに衣装変更が紐づくだけで、もはや遊びの幅は無限大。たとえば街中にはイスやベンチが置いてあり、座ることができる。ゲーム的に座る意味はとくになく、単なる飾りの遊びかと思いきや、そこでフォトモードが生きてくるワケ。街中で、優雅に座っているニキのシチュエーションが作りだせる。 また、全員が全員ではないが特定の登場人物たちにカメラを向けると、ポーズをとってくれるのもうれしい。記念撮影的に楽しんだり、思い出の1枚を残すのもおもしろい。なんならニキの表示自体を消すこともできるので、登場人物たち単体の撮影も可能だ。 手前の女の子がポーズを取っているが、じつはカメラに合わせてではなく物語に合わせたポーズ。それに合わせて撮影する、といった使いかたもできる。 なお、ニキを撮影する以外にも名所などを撮影する収集クエスト系も存在。アルバムにあらゆる写真を撮り溜めして、自分だけのマーベル大陸の体験を残していくことこそが、『インフィニティニキ』の真の魅力であると、筆者は感じた。 カメラの機能解放もやり込み要素のひとつとなっているので、運営側も本作での重要なコンテンツであると認識しているはず。あまりにも撮影したいスポットが多すぎて、写真好きな人は進むたびに撮影したくなってしまい、ゲーム進行が牛歩になってしまうかも……! なんだかココ、いい感じの撮影スポットかも。 衣装もなんとなく合う感じにして、ついでに橋の柵に立つ! こういう撮影用の小細工が探索しやすい移動アクションに絡んで、妙に楽しい。 ゲーム内時間は自由に調節可能だ(ミニゲームを遊ぶ、または遊ばずにスキップできる)。 早朝の山々&街中を背後に、いろいろと調整。 んで撮影! みたいな感じで時間が溶けていくのである。危険なコンテンツ! マーベル大陸へと旅立とう! 全体的にはシンプルで難度はそこまで高くなく、快適で楽しい探索やアスレチック、適度なバランスのバトルや謎解きなどを楽しめる、オープンワールドタイトルの入門にうってつけのようなゲームになっている。“心ときめく癒しのオープンワールドRPG”と銘打っている理由が、プレイを通じてとても感じられた。 もちろんそういった要素も楽しいは楽しいのだが、オープンワールドタイトルやMMORPGを数多く体験した人にとっては、あまり新鮮味のないシステムにまとまっているので、味気がないと言えば味気がない。が、遊びはてんこ盛りなので、何もない広大なフィールドが広がっているわけではなく、遊び応えと発見の楽しさは間違いなく味わえる。 いたるところに遊びがあり、たとえば街中にあるものをふと調べてみると……。 ミニゲームが始まったりすることも。 だが、そこに“ファッション”と“撮影”の要素が加わっている部分が、本作最大の魅力と言えるだろう。撮影の自由度はあまりにも高すぎるため、もはやここがいちばん難度の高い部分かも。それくらい楽しさと無限の遊びの幅が広がっていて、きっとSNSなどではプレイヤーたちの写真投稿も賑わうのではないだろうか。 唯一気になる点というか、『ニキ』シリーズの難点として挙げられるのが、どうしても主人公は“ニキ”であり、プレイヤーはニキを好きにならないといけないゲームであること。メイクや肌色すらカスタマイズできるとはいえ、根幹にあるのはひとりの女性・ニキだ。キャラクタークリエイトが楽しめるわけではない点は、不満に思う人もいるだろう。 もちろんニキに目がいきがちなゲームではあるが、登場人物とても多く、魅力的なキャラクターたちと出会いながら冒険をくり広げていく。出会った人々との撮影はもちろんのこと、選択肢による会話も盛りだくさん用意されているので、ゆっくりとキャラクターたちと仲良くなっていくのもいいだろう。 運営型タイトルなので、イベントやアップデートなどでどのような盛り上げかたをしてくれるのかは、今後楽しみにしたいところ。ファッションゲームが好き、フォトモード重視のゲームが好き、ほんわかとした世界観で冒険がしたい人など、さまざまな角度からオススメしたいタイトルとなっているので、少しでも気になったら、まずはスマートフォン版でもいいので、気軽にダウンロードしてみてほしい。