雪は天からの手紙 北陸の冬 暖冬傾向で冬将軍は筆不精か 短期の局地的大雪には注意
「エルニーニョで暖冬少雪傾向」は一般論 時には大きな例外も
一般に「エルニーニョ現象が発生している時の冬は暖冬少雪傾向」「ラニーニャ現象が発生している時の冬は寒冬多雪傾向」とされています。一般論としてはうなづけますが、この文言だけをもってして、冬の気温や降雪量の見込みを語るのにはかなり無理があります。逆にその年の状況によっては、全く有益な情報に成り得ないということもあるのです。 今夏は、エルニーニョ現象下で、一般論である「日本は冷夏の傾向」に反して、平均気温は平年よりかなり高く、8月の北陸地方の平均気温は沖縄よりも高くなりました。 また、昨冬(2022年度)の冬は、ラニーニャ現象が発生していましたが、北陸地方全体では平均気温・降雪量ともに一般論通りにはならず平年並みとなりました。それどころか、降雪量は平年より「少ない」或いは「かなり少ない」地点もありました。 年度毎のエルニーニョ現象やラニーニャ現象の発生有無、正及び負のインド洋ダイポールモード現象の状況が確認され、且つ、福井・金沢・富山・高田の冬(12~翌2月)の合計降雪量がいずれも確認できる1952年度以降の冬の降雪量の多寡のランキングを見てみましょう。 降雪量の過去最多や過去最少を記録したのは4地点ともにまさかの平常年で、福井と富山は56豪雪の冬(1980年度)、金沢と高田はともに1985年度で、ともにエルニーニョ現象やラニーニャ現象も発生していない平常年となっていました。また、記録的な大雪として後世に語り継がれている38豪雪(1962年度)も、平常年となっていました。更に、多くの地点で過去最も降雪量が少なかった2019年度の冬も、平常年でした。更に言えば、富山で歴代2位の降雪量となった1976年度は、一般論で暖冬少雪傾向とされるエルーニョ現象下での出来事です。 最後は、エルニーニョ現象下で正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残ると暖冬になり易いとされている件です。 1982年度の事例をみると、立春後の2/7~13にかけて、日本付近には強い寒気が南下して、まとまった降雪となりました。北陸4地点の福井・金沢・富山・高田(新潟)の降雪量は、北陸西部の3市で100センチ前後、高田では、200センチ前後にも達する大雪となり立春後の寒波となりました。 これは、季節予報で十分考慮出来ていない負の北極振動が強化されたこともあり、結果的に冬の期間を通して、気温は平年より低く、降雪量は平年よりかなり多くなったものと考えられます。 寒気の動向やどこでどのくらいの降雪量が見込まれるかということは、直前まで見極めをしないと分からないということです。
日本気象協会 北陸支店 河原 毅