【ツールドふくしま】被災地創生の推進力に(9月12日)
自転車の「ツール・ド・ふくしま」は14、15の両日、浜通りなどの県内15市町村で開かれる。245キロのコースなどを設定した国内屈指の市民レースで、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みや本県の多様な魅力を伝える絶好の機会となる。東北初のナショナルサイクルルート(NCR)指定を後押しし、自転車を生かした県づくりを加速させる契機にしたい。 原発事故で避難区域が設定された南相馬、田村、川俣、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の12市町村と津波被災地のいわき、相馬、新地の3市町が舞台となる。全国各地の選手、愛好者が集い、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)や釣師防災緑地公園(新地町)などを発着点にレース6部門、タイムを競わないロングライド2部門を繰り広げる。昨年は豪雨の影響で中止となり、今回が初めての開催となる。 コースは浜風薫る太平洋沿いや起伏に富む阿武隈山系の公道に設けられる。多くは原発事故で立ち入りもままならなかった。懸命に古里の自然や文化、暮らしを守り継いできた大勢の住民、行政・企業関係者らがボランティアとして参加し、誘導、給水などで運営を支える。一人一人の熱意に触れ、被災地の今を胸に刻む大会になるよう願う。
県などが今年3月に示したNCRの経路案と重なるルートが多く、国の指定に向けた足掛かりの意味を帯びる。指定が実現すれば、自転車走行に対応した道路改修や国内外への情報発信などで財政支援を受けられる。インバウンド(訪日客)を含めた愛好者を呼び込む環境づくりを前進させ、県内経済の活性化につなげる必要がある。 本県は五輪メダリストをはじめ国際的に活躍する自転車選手を数多く輩出し、いわき市は競輪場を有する。近年は、福島復興サイクルロードレースシリーズが年間を通して開催され、合宿で来県する大学自転車部も増えている。大会の経験値を着実に積み上げ、自転車を楽しむ人々の憧れの地に高めたい。 沿道の声援は参加者を元気づける。交通規制に留意しつつ、多くの県民に足を運んでほしい。自転車の潜在力を引き出すには、関心の広がりも欠かせない。(渡部育夫)