岩田屋三越と博多大丸のトップが考える今後の姿…「こだわった消費に対応」「1人当たりの売上高増」
百貨店のビジネスモデルが転換期を迎えている。福岡市・天神に百貨店を構える岩田屋三越と博多大丸の両トップに、それぞれの戦略を聞いた。 【地図】天神地区の百貨店と今後開業する主な商業施設
カードとアプリ会員52万人目標…岩田屋三越・左中樹太郎社長(55)
消費の志向は低価格と高級品の二極化が進み、こだわりのある高級品に対する消費者の評価は高まっている。そこでブランド品や宝飾時計、美術品の拡充を進め、集客力を高めた。カードとアプリの利用も促し、購買行動を把握することで、再来や別の商品の提案にもつなげている。現在、カードとアプリの会員は計約40万人だが、商圏は九州全域に広がっており、今後は52万人を目指す。
親会社の三越伊勢丹ホールディングスは海外の顧客の動向も把握しようと、複数の言語に対応する訪日客向けのアプリを開発中だ。岩田屋三越の免税売り上げは全体の2割ほどを占め、隣国の韓国からの訪日客が多い。訪日客にもアプリを利用してもらうメリットは非常に高いと考えている。
一方、訪日客の志向も国内客と同様に「こだわった消費」に変化している。国内で喜んでもらえる商品を充実させることで、連動して免税売り上げも向上すると考えている。地域の店舗とも連携して館内にはない商品やサービスの紹介も進め、アジアを代表する百貨店を目指していく。
取引先と協業しオリジナル商品…博多大丸・村本光児社長(58)
顧客の高齢化が進む中でコロナ禍に見舞われ、自社のカードを分析すると70~80歳代の顧客の回復が鈍い状況だ。セールやポイントの特典などで集客する従来の手法では、将来的に業績が厳しくなることは明確だった。そこで、集客よりも1人当たりの売上高を増やす方向に戦略を転換した。
高額品の購入が多い外商の顧客は現在、60~70歳代が多い。バランスがとれた顧客の年齢構成を目指し、若い富裕層の呼び込みを図っている。その旗印として外商の顧客向けのラウンジを刷新した。同じフロアには来年度、現代アートのギャラリーを整備して若年層の来店を促す。
店舗の活性化策としては、需要の高い総菜や菓子の拡充を念頭に、食品フロアの改装を検討したい。その際には、自治体と博多大丸が連携して地域の魅力を紹介している九州探検隊の取り組みを生かし、九州にこだわったオリジナル商品を取引先と協業して作りたいと考えている。
天神地区は大規模な再開発によって街が発展している。我々も顧客に支持されるように進化していく。