“脳トレ”川島隆太教授「スマホを長時間使う子供の学力は極端に低い」
■スマホを使うとどのような状況でも脳はリラックス 田畑:子供だけでなく大人もということですが、スマートフォンを使っているときの脳の状態はどういう状況なんですか。 川島:様々な場面で脳の働きを計測しました。その結果分かったのは、どのような場面であっても、スマートフォンを使っていると、脳の中でも前頭前野と呼ばれている、思考や注意能力、それから予測の力、我慢する力、こういう非常に大事な力がある部分が全然働いてくれないのです。それどころか、時々見るパターンとしては休んでしまう、ということも分かりました。 田畑:著書の中では「リラックスしているのと同じような状況」と書いてありました。 川島:はい、様々な脳活動を測ったデータと見比べてみると、前頭前野の働きが下がるというのは、非常にリラックスしているときに見られるんですね。ですから、私達の仮説では、スマホをいじるって、脳のリラクゼーションではないかと考えています。 ■言葉の意味をスマホ、辞書それぞれで調べると… 田畑:これは、例えばスマホで癒しの映像を見るとか、そういうときだったらまだ分かるんですが、何か調べ物をしているとか、どういう使い道でも同じような結果なんですか。 川島:はい、例えば難しい言葉の意味を調べたりとか、あとは文章を書いたりとか。それもチャットのような短いものではなく、メールぐらい長い文章を考えて書いてもらうということをしたんですけれども、全く働かなかったです。 田畑:言葉一つ調べるにも、辞書を引くというアナログなやり方と、スマートフォンでパパッと短時間で調べるのとでは、脳に残る具合も違うってことですか。 川島:はい、脳が働かないだけではありません。実験で大学生に「覚えろ」ということは言わずに「言葉の意味調べだけしてください」と伝え、いくつかの言葉の意味を調べてもらう際、辞書を使ったときと、スマホを使ったときとで比べてみたんです。すると、スマホを使ったときは、その後に「さっき調べた言葉の意味をもう一度思い出して」という質問をしたところ、スマホを使って調べた言葉の意味は一つも思い出せなかったんですね。要は記憶に残らないんです。一方、紙の辞書で引いた言葉の意味は、半数以上思い出すことができました。