センバツ21世紀枠候補・川之石 「門外不出」のスイング生みだす奇抜な練習法
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第93回選抜高校野球大会の出場校が1月29日の選考委員会で決定する。21世紀枠候補校に選出された川之石(四国・愛媛)は、独特の練習で相手投手攻略法を磨き、打倒強豪校で存在感を示している。 【写真】監督自らが実演する川之石独特の練習方法 半分に切ったペットボトルの上に硬球を乗せ、ひざをかがめて打ち込んでいく。その近くでは、約30センチ間隔で組んだ竹の棒の間にバットを通す素振りを繰り返す。川之石の打撃練習は、見た目にもかなり独特だ。選手15人の小所帯ながら強豪校を倒すため、数多くの工夫を凝らしている。 ペットボトルを使った打撃練習は、内角低めの変化球に対応するのが狙いだ。バットのヘッドを遅らせたスイングでボールを内側からさばくことで、ゴロにならないヒット性の打球が飛ばせるという。就任8年目の松本富繁監督(48)は「能力がある選手なら反応で打てるが、うちの子たちは球種や球速に応じた構えをしないと打てない」と説明。「基準」の構えに加え、「さばき」「しばき」などと名付けた5種類のスイングを使い分ける。これらは松本監督手製の「野球ノート」で図解されているが、いずれも構えで狙いが分かってしまうため、門外不出だ。
その成果は、昨秋の愛媛大会初戦で表れた。夏の愛媛独自大会準優勝校の宇和島東を相手に、一回に5連打で一挙5得点し、7―2で快勝。相手左腕の内角低めの球を逆方向へ打ち返す打撃の徹底が奏功した。2点適時打を放った二宮翔星(2年)は、独特の練習法に「最初は『何を言っているんだ』という感じで分からなかったが、少しずつ身についている」と手応えと結果に満足している。 同校はボランティア活動にも注力する。野球部員も障害者と夏祭りで踊ったり、秋には地元のミカン農家の収穫を手伝ったりと、内容も多岐にわたる。主将の河野悠大(2年)は「地域の方に感謝されることは力になるし、自分から動くことでプレーでも周囲を見る力が養える」と効果を語る。 同校は1983年夏の愛媛大会で準優勝が最高で、甲子園は春夏通じて出場がない。松本監督は「自分も含めて能力は決して高くない。それでも『二流の一流』を目指して練習を重ね、小規模校でも戦えることを示したい」と、春の便りを待ちわびている。【伝田賢史】