米雇用増を支える移民、巡航速度アップか-パウエル氏予想は約10万人
(ブルームバーグ): 米国の雇用は移民増加が追い風となり、今年もパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がこれまで長期的に持続可能だと考えてきた水準を上回るペースで伸びるだろう。
こうした見立ての核心にあるのが中立的な雇用者数の伸びと呼ばれるものだ。労働市場のひっ迫や賃金上昇圧力を招くことなく、雇用者数をどれだけ伸ばせるかという、いわば巡航速度に関する推定値と言える。エコノミストは移民流入がこれを押し上げていると主張しており、今年は月間平均16万-26万5000人増と推定している。
パウエル議長は2022年、雇用の長期的な巡航速度は推定およそ10万人増との考えを示しており、エコノミストの予想レンジはこれを大きく上回る。米雇用は昨年、月間平均25万1000人のペースで伸びた。
FRBの元エコノミストで、現在はブルッキングス研究所のハミルトン・プロジェクトの責任者を務めるウェンディ・エデルバーグ氏は、「2024年を通じて雇用の大幅な伸びが続くだろう」と指摘。「労働市場の過熱によりインフレが下がらないのではとの懸念が生じることはないはずだ」と話す。
5日発表の3月米雇用統計に関するブルームバーグ調査によると、非農業部門雇用者数の予想中央値は約21万3000人増と、前月の27万5000人増から減速する見通し。失業率と賃金の前年比上昇率はいずれも低下が見込まれている。
昨年も同じような傾向が見られた。雇用者数が度々上振れし、賃金の伸びは物価とともに緩やかになった。従来の常識とは矛盾する構図だが、パウエル議長らは移民流入がその背景にあると考えている。移民は労働力の供給を増やすとともに、低賃金の仕事に就くことが多いため、賃金総額を抑えている。
米議会予算局(CBO)が昨年の移民数の推計データを倍以上となる330万人に上方修正したことで、エコノミストは雇用者数の予想を見直し始めた。CBOは2024年についても同規模の移民流入を想定。2月の報告書では移民の増加によって今後10年間で7兆ドル(約1060兆円)の経済押し上げ効果があると見積もった。