【中山金杯回顧】シルバーステートが持つロベルトの底力 リカンカブールがロングスパート戦で本領発揮
高速馬場が導いた1.58.9
実質、連続開催であっても、暮れと正月の開催では馬場は大きく異なる。今年の中山金杯当日はその傾向が顕著だった。クッション値はホープフルS当日9.0に対し、金杯当日は10.3で、大きく変化していた。クッション値が1以上動くのは、雨で馬場が一気に悪化したときぐらいで、良馬場でこれだけ変動するケースはまれだ。Cコースに替わり、悪かった内側が保護された影響は大きく、芝2000mは未勝利戦で1.59.8、マイル戦のジュニアCでは1.32.5が記録された。逃げ切りや2番手から抜け出しなど、高速決着が目立つ中山特有の馬場バイアスだった。 【中山金杯 2024最終予想】本命はAI予想家2体が◎、買い目は13点推奨! AIを使い的中を狙う (SPAIA編) 金杯の1.58.9は15年ラブリーデイ1.57.8(レコード)、09年アドマイヤフジの1.58.5に次ぐ3番目に速い記録だ。だが、競馬では速い時計とその価値はイコールとはいえない。中山金杯はその典型といっていい。上記の通り、高速決着連発だった馬場を踏まえると、未勝利と0秒9差は重賞としては物足りない。一方で、未勝利は前後半1000m1.00.2-59.6でバランスのとれたラップ構成であり、2番手から抜け出したミッキーラッキーは昇級しても楽しみだ。 対して中山金杯は前後半1000m1.00.5-58.4でスローペースに近い。前半の遅れを後半で取り戻し、未勝利戦より0秒9差速かったのは重賞であれば、特筆すべきものでもない。だが、後半1000m11.8-11.8-11.7-11.4-11.7は中身が濃い。1000mのロングスパート合戦のなか、残り400~200m11.4は脚力の高さの証。好位から抜け出したリカンカブールは小回りの持久力勝負での強さを発揮した。
令和の世にロベルトの底力
父シルバーステートは脚元の不安で大成できなかったが、能力は父ディープインパクトの後継として最上位ランクという評価もあった。21年に産駒がデビューすると、ディープインパクトというより、母シルヴァースカヤに流れるロベルトの血が濃く出たようにみえた。もっとも勝率が高いのは中山の10.8%(芝・ダート)で、重賞勝利は阪神で行われたファンタジーSのウォーターナビレラと、中山のニュージーランドT・エエヤン、福島の七夕賞・セイウンハーデス、そして今回と坂のあるコースでの活躍が目立つ。 リカンカブールも好走歴は中山、阪神、小倉と高速上がりを必要としない舞台ばかり。底力を引き出すロベルトの血は、かつて有馬記念で強かった。瞬発力のサンデーサイレンスに対し、持久力勝負で対抗できたのがロベルト系だ。しかし、高速馬場への対応に難があったロベルトの血はサンデーサイレンス系に駆逐されてしまった。いま残るのは、グラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリスの流れぐらい。シルバーステートは令和の世にロベルト特有の底力を呼び戻した。同馬に流れるシルヴァーホークはグラスワンダーの父でもある。 後半1000mスパートを好位から制したリカンカブールはまさにロベルト系と同じ適性がある。軽いレースだと案外走れなくても、得意の持続力勝負でよみがえる。買い時はここだったろう。昨春は中山の不良馬場で勝利したように道悪も苦にしない。道悪はロベルト系。これは昭和、平成の馬券術でもある。