「米中半導体戦争」激化 米国、中国の非先端半導体の氾濫警戒 中国、報復で米半導体大手をやり玉に 日本は「パワー半導体」に強み
米国の半導体産業を強化するためにバイデン政権が重視したのは国内事業者への補助金政策だった。
トランプ氏の狙い
だが、トランプ氏は別の手を使う。10月に人気ポッドキャスターのインタビューに答えたトランプ氏は「半導体の輸入品に高関税を課せばいい」「工場建設のために彼らに資金を渡す必要はなかった」との見解を示した。「タリフマン(関税男)」を自認するトランプ氏は、関税を引き上げることで米国内に半導体産業を引き寄せ、中国を突き放す狙いだ。
平井宏治氏「『日米台』での供給網再編が必要」
米中半導体戦争が日本に及ぼす影響は小さくない。
熊本県菊陽町に進出した台湾積体電路製造(TSMC)は、稼働中の第1工場に加え、第2工場も来年1~3月に建設開始を見込む。「台湾有事」をにらんで、同社の生産拠点が台湾に集中していることは各国や投資家からリスクとみられ、日本や米国、ドイツが誘致を急いでいる。
平井氏は「従来の日本は中国に半導体製造装置や材料を輸出しており、現在でもレガシー半導体については日中間で供給網が構築されてきた。トランプ次期政権が対中関税を強化すれば、中国は製品の販路を日本市場に見いだすかもしれない。だが、対中強硬路線に歩調を合わせなければ日本も制裁や報復関税の対象になりかねない。TSMCを軸に『日米台』での供給網を再編するなど、トランプ政権と渡り合える環境づくりが必要だ」と注意喚起する。
日本が強みとするのはパワー半導体だ。英調査会社オムディアによると、23年パワー半導体の世界シェアは、欧米勢が1~3位を占めるが、4位に三菱電機、5位に富士電機、8位にローム、9位に東芝が入っている。
23年に経産省はパワー半導体の設備投資に補助金を出す制度を始めたが、「2000億円以上の投資」を条件とした。1社単独での投資を難しくして再編を促す狙いだ。
平井氏は「パワー半導体で世界シェア1位のドイツのインフィニオン・テクノロジーズも再編によって生まれた。日本国内のパワー半導体は各社それぞれが技術的に強みを持っており、世界との競争力を十分に持つことができる」と力説した。