「“満額”と出る度に背筋が寒くなった」「人件費の転嫁は理解されない」 大企業の賃上げの波は下請けまで届かない?
また、廣濵氏は「昨年の資材価格の高騰は、価格転嫁せざるを得ないというのはみんなわかっていた。ところが今年上がっているのは人件費だけで、その分の見積もりを持っていくと“なにそれ?”となる」とした。
■下請け構造の中“企業努力”どこまで求める?
公正取引委員会は2022年、価格転嫁の協議に応じないか、回答していない13の企業・団体を公表して是正を促すなど、“下請けいじめ”に動き出している。一方で、構造的な問題は根深いと小林氏は話す。 「ビジネスモデルが変わってきている。戦後の経済成長期は団塊世代が消費していたので、作るものも非常に多かった。その中でコストを下げて処理してきたが、今の時代はそこまでの数量は売れない。そうなると世界に売らざるを得ないが、直接出ていくのは難しく、上のメーカーなどと協力する必要がある。我々は現状、弱者連合に近いかたちで、日本の衰退が想像以上に進んでいるところになっていると思う」
廣濵氏は「本当に頑張って成果を出している会社も、まだまだ努力が足りない会社もある」とした上で、「中小企業は生産性が悪い」という声には疑問を呈する。 「効率と収入で両方考えなければいけないことがある。収入はどれだけ価格に対する競争力を持てる会社・事業にするのか、新しいモノを作っていくかだが、下請け構造の下になっていくほど厳しい。地方に行けばお客さんは少ない。しかし、そのお店・会社がないと困ってしまう、という中でやっている中小企業もある。もう1つの効率面だが、そもそも効率を上げることが難しい仕事しか回ってこない。面倒くさい、人手がかかるから下請けにやらせようという構造はある」
その上で、「経団連が“社会的責務として賃上げする”と言ったのは、けっこう重い話。大企業が抱えている子会社やその下の取引先も含めると、影響力は大きい。中小企業、エッセンシャルワーカーは大事だ、ということがわかってきた中で、きちんとした工賃、賃金を払うことになれば、それぞれの良いところを一番発揮できる社会になると思う。今はその転換点ではないか」と述べた。 小林氏は「自動車や保育、介護といった業界は低賃金だと炎上して変化が訪れたように、我々も何かきっかけになればなと思う。ニュースになるのは大手の話ばかりで、小さいところの情報はなかなか出てこない。しかし、地方銀行などは情報をたくさん持っていると思うので、そういった生の声を表に出すことで、多少なりとも議論が進んでいってほしい」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)