まるでオレンジの壁だった新潟サポーター 名古屋が制したルヴァン杯決勝は内容、展開、そして雰囲気…どれもが手に汗握る一戦だった
◇記者コラム「Free Talking」 名古屋グランパスの3年ぶり2度目の制覇となった2日のルヴァン杯決勝・新潟戦(国立)は、サッカーを現地で見る良さを再認識させてくれた。延長戦を終えても3―3で決着がつかず、PK戦で5―4。内容、展開、そして雰囲気のどれもが手に汗握る一戦にふさわしかった。 前日会見でグランパスの長谷川監督が「スタイルとスタイルがぶつかり合うような試合になるのでは」と予想した通り。グランパスの前半31分の先制点は、新潟のGK阿部のパスミスからだったが、GKも含めてパスを回して攻撃を組み立てる新潟に対し、徹底的に前線からプレスをかけ続けた結果だった。 9月18日にリーグ戦で対戦した際、新潟、横浜M、川崎のスタイルを「構造的には変わらない」と指摘していた。FC東京で指揮した時から川崎とは「多摩川クラシコ」で対戦したが、Jリーグを席巻した相手に苦杯をなめることに。ここ数年、執念をかけて倒そうとしてきたスタイルを破って得た優勝カップともいえる。 スタジアムの雰囲気でいえば、初優勝へと導こうとする新潟サポーターの迫力にはすごみがあった。特に、後半終了間際に2―2の同点となった際は、正直、新潟が勝つ流れだと思ったほど。国立の3階層のゴール裏は、まるでオレンジの壁のようだった。 逆にPK戦はグランパス側。GKランゲラックを鼓舞しようと多く振られた母国のオーストラリア国旗は見事で、守護神も「みんなで戦えた」と試合後に語っている。 応援がどこまで結果に影響を与えたのかはわからないが、ランゲラックは「21年と比べて今回はスタジアムが満員だったし、ものすごくいい雰囲気でプレーできた」とも語っている。前回優勝はコロナ禍の制限でスタンドは閑散としていた。選手のモチベーション向上につながったことは、間違いないだろう。 今季から、J1からJ3まで全60クラブに参加が拡大されたルヴァン杯。いわば、トーナメントで「Jリーグ1位」を決める大会となった。日本代表のほとんどが海外勢となった現在だが、現地観戦できるJリーグの魅力が詰まった一戦だったように思う。 (サッカー担当・林修史)
中日スポーツ